オレンジから紫色のグラデーションがかった空。
町にほどこされた装飾の光が低いところを明るくそめていて、綺麗だ。
このシーズンだけの町の表情。
初めて体験するタカ丸はマフラーに顔を埋めながらきょろきょろと見回した。
「向こうに比べたら地味でしょう?」
滝が少し恥ずかしそうに言った。
帰国子女のタカ丸にとっては、どこかふぞろいで数の足りていないこの飾りつけは見るに足りないものかもしれない。
それでもタカ丸は目を輝かせ、楽しそうに笑った。
「俺は好きだよー」
「でもテレビで見た向こうの方がもっと立派ですよ」
ちかちか目に痛いピンクと青の蛍光を眺めて微笑むタカ丸に、
両手を組んで息を吐きかけながら三木が苦笑を浮べて言った。
それでもタカ丸は「でもー」と口をすぼめて、
「向こうの派手なのより、こっちのがあったかいもん」
白い息をこぼしながら笑うタカ丸に、滝と三木も釣られて笑みを浮かべた。
楽しいなぁと空を見上げる。
綺麗に澄み切った空。
「いっそ雪が降ればよかったのにな」
少し残念そうに呟く三木の声。
「寒いからやだ」
タカ丸と腕をくんでいた綾部が急に口を開いた。
帽子に手袋、コートを着てマフラーも巻いた完璧防寒の綾部は少し不満げだった。
「きっと綺麗なのに」
三木と同じような声音でタカ丸が言うと、綾部は頬をふくらませた。
滝はそんな綾部に苦笑を浮べながら、でもホワイトクリスマスも良かったんじゃないかと想像する。
ただ、言葉に出すと綾部が拗ねてしまいそうだから言わないけれど。
クリスマスソングがエンドレスで流れる町中を4人で並んで歩く。
よく知っている歌が聞こえてきた。
それを聞いた綾部がすっと息を吸った。
「まっかなおはなのーとなかいさんはー」
「喜八郎が歌った!」
「うわぁ!」
綾部の町の賑やかさから少しずれたテンションの歌声にふたりが笑う。
タカ丸は見上げてきた綾部に笑いかけ、同じ歌を歌った。
「でもそのとーしのー クリスマスのひー サンタのおじさんがー いーいーましたー ♪」
楽しい楽しいクリスマス。
いつもより多い人の足音、今日が終われば消えてなくなる限定のデコレーション。
ツリーの一番上の金色の星がきらきらと眩しい。
通り過ぎる人たちが皆白い息をおとしながら笑いあう。
家族に手を繋がれて歩く知らない小さな子供が振り返り、4人にメリークリスマスと笑いかけた。
サンタクロースの赤い帽子をかぶった男の子。
この上ない極上の甘く愛しい微笑み。
「「「「メリークリスマス!」」」」
賑やかな町の中、こらえずに声を出して笑い出した。
ああ、なんて楽しいんだろう!
みんながいるから
幸せな聖夜