覚悟の見せかた

 

 
 
しゅるり
 
 
髪を纏めていた紐を解くと、
金色の髪が青い背中に広がり落ちた。
 
 
 
 
その音を聞いたのか、それとも気配を感じたのか。
見張りの兵士が場違いな方向ながらもあたりを見回し始めた。
 
 
 
「どこ見てるのぉ、うすのろさん」
 
 
寒気のするくらいに陽気に響いたその声は、そこにいた4人の駐兵を振り向かせた。
視線の先には不審な人影が笑って立っている。
 
兵士たちはその影に思わず足をすくませた。
闇に紛れない見事な金髪。
黒とは遠くかけ離れたその人影は、侵入者としてはあまりにも珍しく怪しい。
 
 
「鬼さんこっちら」
その人影の危機感のない声に腹を立てたのか、
駐兵のうち1人の若い男が雄叫びをあげながら武器を構えて突進して来た。
対峙する侵入者の影、タカ丸は呆れたように息をつき、
「鬼ごっこの仕方も知らないの?」
と言って後ろにぴょんと跳んでその攻撃を避けた。
そのような大振りで隙ばかりの攻撃では、
一年間忍術学園で修行を積んだ忍者の卵には当たるまい。
 
 
「かかっておいで」
 
 
肩眉だけ吊り上げて、唇に挑発的な笑みを乗せた。
単純な兵士達は憤激して武器を構える。
タカ丸は笑顔を見せながらも、その目は射抜くように強く攻撃的だ。
 
 
「ッ曲者だ!」
「とっ捕まえろ!!」
 
2人の兵士がタカ丸に向かって走ってきて、
あとの2人が高らかに叫んだ。
城中の兵士がこちらに集中しているほうが都合がいい。
兵助がいないことに気付かれることは遅いにこしたことは無い。
そう思いながら内心ほくそえみ、
タカ丸は追いかけてくる男達の目の前で、さっと渡り廊下から庭へと飛び降りた。
 
 
跳ぶタカ丸の髪はおおきくはためき流れうつ。
甘く蟲達を誘う蜜のように、その髪は男達の目をことごとく奪った。
 
 
とん、と軽い音を立てて地面に降り立ったタカ丸は、
呆然と見惚れるように立ちすくむ男達に、底意地の悪い笑みを向けた。
 
 
「俺の覚悟、見せてあげる」
 
 
 
無理やり取り付けられた一方的な約束でも、
彼とのものなら果たさなければならないと思える。
だから生き抜く覚悟をした。
 
 
 
「これるもんならついてきやがれ」
 
 
にっと笑顔を見せ、タカ丸は懐から短刀を取り出した。
ずいぶん大勢の足音が追いかけてくるのを聞きながら、苦笑を漏らす。
1人相手に随分なお迎えだ。
タカ丸は追いかけてくる男達をぐっと睨みながら、振り返って敵の方へ走り出した。
捕まる気も易々くたばる気も毛頭ない。
 
 
(兵助くんは大丈夫かな)
どうか夜が明けて明るくなる前に、影に隠れて学園へ帰ってくるように願いつつ、
 
タカ丸は短刀の鞘を抜いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
***
 
コウさんが拍手で仰ってくださったことをもとに、
ほんとに書きたいところだけ書いた(最悪
タカ丸は挑発的な笑顔で誘って、敵の目を引きつけてほしいw
 
これからタカ丸がかっこよく敵を短刀で切り抜いていくんですが、
描写ができずに諦めました申し訳ありません(土下座
 
また後日談も書かせていただきます!