拍手3

 

「寒ッ…帰りたい。まじ帰りたい」
「せっかく来たんだから初詣していこうよ…」
「こんな行列じゃ1時間はかかるだろ」
近所の無名の神社といっても、やはり元旦を迎えたばかりのこの時間には人が多い。
三郎にとっては並ぶ気も失せるような人の行列に、白い息をついた。
「ガキ使最後まで見たかったのに…」
「録画してるでしょ」
「けど後から見たら萎えるじゃん」
その言葉に八左ヱ門は「あぁー」と薄っすら同意したが、
雷蔵は「そんなものかなぁ」と首を捻った。

「メール送れん…」
「今は無理だろー」
兵助が何度か目の送信ボタンを押しながら言うと、
八左ヱ門は苦笑する。
「斉藤からメール来てないのか?」
「あー…年賀状書いたって言ってたからメールはしないって。
来たら返すとは言ってたけど」
「ふぅん意外と律儀だな」
「日本の文化!とか言ってた」
「あいつが言っても説得力ねぇなぁ…」
金色の頭の帰国子女を思い浮かべ、三郎は笑った。

「タカ丸くんは同級生と年越しパーティーしてたんでしょ?
 初詣には来てないのかな?」
「あー…どうなんだろう」
うーんと兵助が唸っていると、隣で八左ヱ門が「ん?」と足を止めた。
「あれタカ丸さんじゃね?」
そう言う八左ヱ門の目線の先を追うと、きょろきょろと辺りを見回す一際派手な頭を見つけた。
薄暗い境内の人ごみの中でも少し突き抜けた派手な金髪。
きょろきょろと頭を揺らして人ごみの中で立ち止まっている。
「ひとりなのかな?」
雷蔵の呟きどおり、周りに見知った顔はない。
どうしたのかと眺めていると、視線に気がついたのか、金髪がこちらを向いた。
一瞬驚いたような顔をして、それからぱっと顔を輝かせて、
人ごみを器用に掻き分けながら早足で向かってきた。


「あけましておめでとう!!」

 

***
拍手ありがとうございます!
ちょっとした正月小話ですが続きます。
 
 
「今年もよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
タカ丸の会釈につられるように雷蔵も頭を下げる。
 
「それよりどうしたんだよひとりで」
「んー滝ちゃんたちと一緒だったんだけどねぇ…はぐれちゃった」
そういって苦笑するタカ丸に、兵助はため息をついた。
「馬鹿。探してるんじゃないのか?」
「多分探してくれてるだろうなぁ…」
心配性というかタカ丸についてなにかと過保護な面々を思い出し、
迷子の本人もばつの悪そうな顔をする。
 
「ケータイも繋がんないし、どうしよ」
「どこらへんではぐれたのかも覚えてないのか?」
「うーん…あ、甘酒ただで配ってるって言ってたから、行こうかって…」
「町内会のやつか…じゃあ、ちょっと探しに行ってくるわ」
兵助の言葉にタカ丸は目を丸くして「えぇ!?」と叫び、
会話を聞いていた友人たちは「いってらっしゃーい」と送り出す。
兵助はそのまま未だ驚いているタカ丸の腕をとり、人の波に突っ込んでいった。
 
 
「えっと、いいの?皆と一緒に…」
「いいよ。大晦日は一緒に入れなかったんだし、今日くらい」
変な遠慮すんなと言えば、タカ丸は一瞬さらに驚いた顔をして、
その後眉を少し寄せて照れ笑いを浮べた。
「兵助くん耳赤い」
「寒いんだよ」
耳だけじゃなくてほっぺたも赤いよ、とは言わない。
タカ丸は腕を引っ張られながら、兵助の後姿を見つめて笑みを浮かべた。
 
「じゃあさっかくだしさ、甘酒もらおうね。
あったまるよ」
「うん」
 
2人はだんだん近づいてくる甘い香りを目指しながら、少し早足で歩いた。
 
 
***
メールは無理でも電話は行けるんだろうか。
…ごめんなさい、なんとか無理な方向でお願いします。
 
 
「タカ丸さん…!」
「どこいったんだあの人!」
滝夜叉丸と三木ヱ門は過密すぎる人ごみを見回す。
困ったことに、あの金髪は見つからない。
 
「誘拐されていたらどうしよう…!知らない人についていってないだろうか…!」
「いや、さすがにそれはないだろうけど…って、おい綾部!ちゃんと探せよ!」
滝夜叉丸のあまりの嘆きにツッコミを入れながら、三木ヱ門は少し後れて歩く綾部を振り返った。
「………」
綾部は無言のままで、三木ヱ門はため息をついた。
「頑固だなぁ…お前、いい加減しゃべれって…わッ!」
後を向きながら歩いていたせいで、勢いよく人とぶつかった。
慌てて謝ろうと顔を向けると、
「し、潮江先輩…!?」
「余所見をしているんじゃない」
見ればよく知る3年生の先輩6人が集っていた。
 
「おー!滝、あけおめーー!」
「あ、あけましておめでとうございます」
七松に笑いかけられ、滝夜叉丸も慌てて挨拶をする。
「お前達も初詣か」
「あ、はい!あの、タカ丸さん見ませんでしたか?」
三木ヱ門が潮江に問いかけると、その後ろにいた立花仙蔵が「そういえば」と呟いた。
「さっき見かけたぞ。久々知と一緒にいたが」
「え?」
久々知兵助と斉藤タカ丸の関係は学園内では周知のことだ。
あの先輩がついているなら安心と言えば安心だが…。
 
三木ヱ門と滝夜叉丸はそろって複雑な気持ちで溜息をついた。
まぁタカ丸の身に何もなかったのなら安心だ。
 
やっと肩の荷がおりたところで、三木ヱ門の隣を綾部が通っていった。
そのまま不思議そうにこちらを眺める仙蔵の横も通り過ぎ、後ろにいた善法寺伊作にぎゅっとしがみついた。
「綾部?」
どうしたものかと、綾部の後頭部と後輩達に目を行き来させながら問いかけると、
綾部は腰に手を回したまま顔をあげ、雑踏に紛れそうな声で言った。
 
「あけましておめでとうございます」
 
***
滝は綾部とタカ丸のオカン。
そして4年は基本アンチ久々知な感じ
 
 
「「綾部が喋った!」」
滝夜叉丸と三木ヱ門が口を揃えて驚愕の口調で綾部を指差して言った。
 
「…どういうことだ?」
「え、わかんない」
伊作と隣にいた食満留三郎が首をかしげていると、
滝夜叉丸が説明した。
「日付が変わってからまったく喋らなかったんですよ…今までずっと」
「理由はわかんないんですけど…」
三木ヱ門と滝夜叉丸はそろって首をひねった。
しかし、仙蔵はすぐにその訳が分かったのか、ほぉ…と声を漏らし微笑した。
 
「綾部、どうしたの?」
「先輩あけましておめでとうございます」
「あ、あけましておめでとう」
伊作のその言葉に納得したのか、綾部はぱっと手を放した。
 
「私の一番は先輩ですよ」
「…え?」
「ことしもよろしくお願いします」
綾部は伊作を見上げてから、小さく頭を下げた。
よく分かっていない様子で伊作は綾部を見つめたが、綾部本人は満足げだったので、
とりあえず今年も綾部のことをいっぱい勉強しなくてはと決意して、
「うん、よろしくね」
と笑って見せた。
 
 
「よーーーし!滝、焼きとうもろこし食いに行くぞ!」
「えぇ!?初詣ですよ!っていうか私はあんな手が汚れる食べ物いやで…」
「いけいけどんどーーーん!!」
拒否権などないとばかりに、滝夜叉丸は腕を掴まれて人の波にダイブして連れて行かれてしまった。
あっという間の事態に、一同は驚くやら呆れるやら。
 
「とりあえず初詣、いこうか」
今年も一年、騒がしくなりそうだと確信する。
 
***
綾部、へんなとこ献身的(勝手な妄想)
初あけおめは伊作にと決めていた模様。
ていうか夜中に焼きとうもろこしなんか売ってるのだろうか…
 
 
そろそろ前にある人の壁が薄くなってきた。
「そろそろこの寒中行列地獄からもおさらばだな」
「なにお祈りするの?」
「おーなんにしようかなぁ」
「お前は毒虫が逃げませんようにっていっとけ」
三郎が皮肉っぽく言うと、その時八左ヱ門の携帯が鳴った。
 
「あけおめー…ん?………なに?え?
それで………、うん、おぅ。
よし、待ってろ」
八左ヱ門と誰かの会話に、何事かと双子モドキが顔を見合わせた。
電話は直ぐに終わり、携帯を閉じた八左ヱ門は苦笑を浮べる。
 
「孫兵のペットが逃げたらしいから探してくるな」
「ここまで並んだのに」
「俺の分も、こういうこと無いようにって祈っといてくれ」
そういってにっと笑顔を見せ、八左ヱ門は小走りで去っていった。
 
「やさしいねぇ」
「甘いよな」
「まぁ、そんな八の分もお参りしてあげましょ」
「しかたねぇなぁ」
2人は顔を見合わせて笑った。
 
 
 
((でもまぁとりあえず))
 
 
 
(今年こそ平和でありますように!)
 
 
(今年も面白い一年でありますように!)
 
 
***
竹谷は心底男前だと思う。
冬だからじゅんこじゃないだろうし、ペットって何?(聞くな
多分冬眠しない虫とかだと思います(無理やり
 
 
「あ、起きた。おはよ」
「…あけおめ」
「うん、あけおめー」
 
ぼんやりした表情の兵助に、タカ丸が笑みを浮かべる。
タカ丸が可愛いなぁと思いながら、兵助の前髪をかき上げて撫でる。
 
しかし、どうしたことか、いつもなら嫌がるだろう子供扱いみたいな仕草にも怒らない。
タカ丸は首をかしげて問いかける。
「どうしたの?」
「あー…夢見てた」
「初夢かぁ…俺何も見れなかったよー、いい夢だった?」
その言葉に、兵助は思い出すように目線を下に落とし、それからうん、と呟いた。
 
「一個だけ、見れた」
「うん?」
「いい年になるかも」
なにそれ会話になってないよ、とタカ丸は苦笑する。
兵助はまだ眠そうな目でタカ丸を見上げて思い出し笑いを浮べた。
 
 
「それより、ほら顔洗ってきなよ」
「んー…」
「お雑煮作ったから、食べよ?」
「おー…」
「お餅何個いる?」
「にこ…」
「はーい」
 
 
***
一フジ二タカ三ナスビ
 
 
タカ丸の部屋に置かれた真新しいコタツに足をつっこんで、
朝食(といってもほとんど昼に近かったけど)を食べた。
外は晴れているといってもやはり寒くて、お互いコタツから離れられずにいた。
 
「「じゃんけんぽん!」」
 
「あー…負けた」
「ミカン」
「はーい…」
タカ丸は自分がチョキを出したことを後悔しながら、
コタツから出て台所へ向かっていき、
すぐにつま先歩きになりながら早足で帰ってきた。
 
「はい、どーぞ」
「ご苦労様」
兵助はタカ丸のもってきた5、6個のミカンから小粒な甘そうなものを選び、
半分に割ってから皮をむく。
 
 
「そういやさ、兵助くんお年玉のアテある?」
「あ?なに、急に」
「だって高校生ならまだもらうでしょ」
「まぁ、そりゃ家族とか親戚とか?」
「俺もそうだけど、でもほら実家に帰ってないわけだからねぇ」
「あー…そうだな」
兵助は剥いたミカンを一口ほお張った。
(甘…)
 
「お年玉は欲しいけどさ、遠いトコまでもらいに行くのも面倒でしょ」
タカ丸は兵助の剥いたミカンをひとつ勝手に頂戴する。
兵助から睨むような目線を寄せられたが、気にせずに口に放り込む。
(甘っ)
 
「だからさ、近場でもらえそうな人考えた結果」
「うん」
 
 
「土井先生なんてどう?」
 
 
 
 
 
「…お前は先生の胃炎を悪化させたいのか」
 
 
 
 
「……だよねぇ」
 
 
 
タカ丸は手を伸ばした。
兵助はその手の上に一口だけ食べたミカンを置いた。
 
「甘いねぇ」
「甘すぎ」
 
 
タカ丸は後から「馬鹿なこと考えんなよ」と呆れたように注意された。
 
(でも、なんかもう遅いような気がするんだけど、なぁ…)
 
 
 
***
何かと物入り、お金がほしいお年頃
 
 
「「「「あけまして おめでとう ございまーす」」」」
 
 
 
半助が扉を閉める前に、教え子達はドアを押し開けて部屋に上がりこんできた。
 
「あー寒ッ」
「こたつー!」
「おじゃましまぁす!」
「わーい!」
「お邪魔します」
「ちゃんと掃除しましたかー?」
「相変わらずボロイっすね!」
「ほんとのこと言うなよ」
「兵ちゃんこそ言っちゃ駄目でしょv」
「きりちゃんは?」
「お、いたいた」
 
「あ?みんなどうしたんだ?」
 
「うるさーい!!ボロいとか言うな!!お前らのせいで何度大家さんに怒鳴られたか…!」
 
「先生お年玉くださーい」
「ミカンないんですか?」
「ほんとボロいっすねー」
 
「お前らッ…!いい加減にしろぉぉお!!」
 
「先生の声の方が大きいと思いますよ」
 
庄左ヱ門の一言に、半助はぐっと言葉を詰まらせて、
胃のあたりをさすりながら深く深くため息をついた。
 
 
「先生」
「…なんだ、きり丸」
「こんな大勢で正月過ごすなんて初めてっすね」
「…」
「楽しみましょうよ」
「……仕方ないなぁ」
 
半助が諦めたように苦笑すると、
きり丸はにししっと嬉しそうに笑い返した。
 
 
***
きり丸は孤児で、土井先生とボロアパートで同棲中。
台詞ばっかで申し訳ございません…。
誰が誰か分かりにくいですが、性質悪い言葉はからくりコンビのものだと思われます。
ボロイボロイいってるのは団蔵だと思います。
 
 
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なんかあんまり正月らしいことできなかったね(・ω・`)
 
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そんなことないよ
 
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でも初詣も結局とちゅうで帰っちゃったし、
お年玉ももらってないし、
おせち料理も食べてないでしょ?
ごめんねm(´・ω・`)m
 
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そんなの気にすんな
 
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来年はおせち作るからね!
 
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ほんとに?
 
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うん!
楽しみにしてて(^ゝω・)
 
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じゃあ来年が楽しみだな
 
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そうだねぇ
来年は一緒に年越そうね(・∀・)(・∀・)
 
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うん
そうだな
 
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綾ちゃんみたいにおれも一番最初に
あけましておめでとうって言うから(´∀`)
今年も来年も一緒にいてね!
 
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「なぁ、50年後も一緒だぜ☆って送っていい?」
 
「三郎マジでシめるぞコラ」
 
 
 
***
元日以降の話です。
自分で書いていて糖度の高さにびっくりです
いやなんていうか私にはいっぱいいっぱい。
相変わらず顔文字大好きなタカ丸。
 
 
10
「あのさ、思ったんだけど、」
 
「うん?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「もちって白くて豆腐みたいだよなぁ」
 
 
 
 
 
 
 
 
「…兵助くん、もいっかい顔洗ってきなよ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(うまそう…)
 
 
 
 
 
(…可愛いなぁもう)
 
 
 
 
 
***
初夢の話のすぐあとです。
雑煮食べているときの話。
最後がこんなんでごめんなさい!
拍手10回もありがとうございました!!
 
どうぞこれからもよろしくお願いします!
おそまつ!