秘密

 

激しい揺れの中に生み出されていく快楽。
深く肺から吐き出した息が、汗ばんで艶めく前髪を揺らした。
一筋、流れて落ちて、汗が肌に跳ねる。
見上げたそこにある顔は、凛々しくて色っぽい。
眉間に少し皺を寄せて、薄く開いた唇から息をおとす。
俺を求めてるその顔、たまらなく好き。
 
 
明日から忍務にいくんでしょう。
どうせ優秀な君のことだから、できるだけ早く帰ってきてくれるんでしょうけど、やっぱり少し寂しい。
この身体に印をつけてくれれば、それを見て今の体温を思い出せるのに、
優秀な君はそんな痕を残したがらない。
だからやっぱり少し寂しいよ。
 
 
忍務だから何処へ行くのか何をするのかも聞けない。
だからいつも君にこうやって抱かれていると、いつも不安になるの。
ねぇ、一体どんなことをするの。
 
 
俺は汗の玉が滑る、その滑らかな背中に腕を回す。
乱れた黒髪が指先を掠めた。
いつも綺麗に流れているそれの乱れた様。
それを美しく仕上げるのもあられもなく乱すのも俺次第。
 
 
吊り上げた唇の隙間から鼻にかかった声と息が漏れた。
俺は揺れにのって、力任せに背中に爪を立てる。
少し伸ばして尖らせて磨いてあるこの爪は、こんなときのためにあるの。
皮膚を薄く裂かれる痛みに目の前の顔がしかめられる。
眉間の皺が深くなる。
そんな不機嫌そうな顔、しないで。
 
 
だって不安じゃない。
君の年になるとその身体を使って色んな忍務をこなすんでしょう。
俺だって少しは勉強してるの、知ってるよ?
仕方のないことだけど、他の人に触れられるなんて嫌だもの。
 
 
にっと笑うと、さらに不機嫌な表情を返される。
それから挑発するように薄く口を開いて舌を見せると、
それにのって、君は俺の唇を塞いでくれる。
熱い舌の温度に体中から汗が噴き出るように感じた。
 
 
いいじゃない爪痕くらい。
この前香油を付けていたら君、あからさまで嫌だと言ったでしょう。
それに比べりゃ背中にある爪痕なんて、誰も気付かないじゃない。
 
 
忍務で他の誰かを抱こうと抱かれようと、仕方のないことだ。
忍者になるための君の道を邪魔しようなんて微塵にも思っていない。
血にも傷にも演技にも慣れないでくれるなら。
 
 
それでも。
それでも、君のそんな顔を見るのは俺だけが善い。
薄闇にくっきり揺れる乱れた黒い髪を知っているのは俺だけで善い。
この背中に優しく腕を回すのも、爪で傷を作るのも、俺だけにしてよ。
 
 
痕とか印とか、そんなの必要ないと君は言う。
そんなことしなくたって、とその先を察して欲しそうに見つめながら。
分かってるよ、そんなこと。
こんなのはただの痛みでしかない。
さらには目印になって、忍者の君には煩わしいものでしょう。
 
 
でも、この我が儘だけは聞いて欲しいの。
君だけは奪われたくない。
俺だけが知っている君でいて。
 
 
ねぇ、兵助くん。
 
 
口吸いの合間にそう呼ぶと、大きな黒い眼が俺を見つめる。
この距離で見つめられるのも俺だけが善いな。
 
 
 
 
いってらっしゃい。
 
 
 
 
どうか、帰ってくるまでその背中の爪痕に誰も気付きませんよう。
 
 
 
 
俺たち2人だけの、秘密だよ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
***
久々知が忍務に行く前とかは、タカ丸が抱かれてればいい。
襲い受けで(重要)
だんだんやる気になる久々知が大好きですニマニマする(勝手に)
 
浮気とかじゃなくてただの忍務だって分かっていても、
やっぱり他の人を抱いたり抱かれたりっていうのは嫌なタカ丸。
女々しすぎましたすいません;
 
でも、多分そういう忍務に行ったとしても、タカ丸は気付いても何も言わないと思います。
久々知も気付いてることに気付いてるけど何も言わない。
そんな夫婦だからこその無限ループ希望←