*小松田さんは学生寮の管理人。
ヘッポコだけど門限すぎたり、無許可外泊とかすると超怖い管理人さん(あだ名ガーディアン)
利吉さんは学園の研修生(みたいな人)。
(バ)カップルです。くっついています。
ぷちん という音がすると共に、視界を根こそぎ奪われる。
一体なんだ、これは。
今まで見ていたテレビの映像も途絶えて、部屋の中は真っ暗闇。
「停電…?」
としか考えられない。
落雷があるような天気ではないはずだが、
新しくもないこの寮のことだから仕方がないといえば仕方がない。
もし寮全室がこの状態であれば、おそらく混乱も起こってるだろう。
様子を見に行って、ついでにブレーカーを上げに行くしかないか。
そう思ってソファーから立ち上がろうとしたとき。
不意に袖をきゅっとつかまれる。
今まで肩がかすれるくらいだった体温が距離を縮め、
更にその上どういうことか、腕に手を回して擦り寄ってきた。
「小松田君?」
なるべく優しい声を努めてそう呼びかける。
視覚が少し慣れてきたといっても、こんな暗闇じゃ表情は覗けない。
「びっくり、しちゃって」
肩にもたれこんで腕に両腕を絡みつけて、小松田君がそう呟く。
耳に近いところで息と同化するような掠れた声で言われて、思わず心臓が早鐘を打つ。
それでも落ち着きはらって「うんうん」と肩に擦り寄る頭を撫でてやる。
ふわりとした指どおりのいい髪からは柔らかい匂いがして、少し口元に笑みが浮かんだ。
「大丈夫だよ、少し待ってて。
すぐに電気つけてくるから」
私の顔も見えないんだろうけど安心させるように微笑んで、その髪にキスをひとつ落とす。
それから立ち上がろうとしたのだが、
腕を掴む小松田君の両手の力はさらに強くなってしまって、立ち上がることさえままならなかった。
もちろんこんな風に甘えられるのは悪い気はしない。
だが、この学園の研修生といえど教師の身分である私が、この事態になんの対応もしない訳にはいかない。
「すぐに帰ってくるから、ね?」
「利吉さんっ…」
耳元で再び聞こえた息は、か細く震えていた。
ぞくっと首の裏が粟立つ。
「行かないでください、ここに、いてください…っ」
暗闇で、聴覚だけをフル活用されている今。
震えた声で、そんなことを、耳に吐息がかかる距離で言われてしまったら。
「っ小松田君!」
「ひゃえ!?」
暗闇の中でも隣にいるその小さな身体を押し倒すことは容易で、
勝手知ったる小松田君の首筋はすぐに見つけることが出来た。
「なにするんですか!」
「何もしないよ、君が嫌がることはね」
鎖骨から首へといくつかキスを落としていく。
「だ、だめですぅ!」
小松田君は慌てた声でそう言って、
私の胸を叩きながら一応抵抗はしているけれど、
やんわりとしたそれじゃあ本気で嫌がっていないことが丸分かりだ。
首から舌先を揺らしながら顎へ、それから下唇まで辿りつく。
軽く唇を押し付けると、んっ、とくぐもった声が聞こえた。
一度なぞるように触れるだけですぐに距離を離すと、鼻先に熱い吐息を感じた。
ああ、暗闇で顔が見えないのが悔やまれる。
顔が見たいよ、小松田君。
頭の中じゃあ「早くブレーカを上げに行かないと生徒達が可哀想だ」と思っているのだけれど、
身体が言うことを聞かない。
(だれかがブレーカーくらいあげてくれるだろう。ていうかもともとどこにあるのか知らないし)
いいじゃないか、仕方が無い。
自身にそう言い訳しながら、さらに深くもう一度、その唇に触れようとした瞬間。
ぴかっ と目の前が一気にぎらっと輝いて、視界が真っ白になる。
眩しくて思わず目を閉じると同時に嫌な予感に、違う意味で胸が高鳴った。
「なにやってるのかなぁ、利吉くん」
「!?」
その光の先、管理人室のドアを開けたところから、この学園の教師である土井先生の声が聞こえた。
土井先生は問いかけながら、懐中電灯で私を照らす。
その光が縁取る色を取り戻した丸い空間には、赤いソファーと私と、私の下でもがく小松田君。
「なっなんで土井先生こそここに…!」
「ブレーカーがあるのはこの部屋だからねぇ。
生徒から要請があって様子を見に来て見たんだよ、残業中だったから」
土井先生はそう言って、ドアの隣のブレーカーを指先で上に弾く。
そうすると今までの暗闇は嘘みたいに、ぱっ明るくなった。
蛍光灯が再び働き始めて、小松田君は安心したように息をついた。
安心してる場合じゃない!!
明るくなった部屋で見る土井先生は、それはもう逃げ出したくなるくらいにいい笑顔を浮べていた。
「でもまさか利吉君がいるのにブレーカーも上げずに、
小松田君に襲い掛かってるなんて思いもしなかったから…」
ノックせずに入っちゃってごめんね?と小首をかしげて謝る土井先生に、
謝罪の気持ちはこれっぽっちも含まれていない。
むしろこのことを明日の職員室でどう話題にしようかと嬉々としている。
…最悪!!
「もうっだからだめって言ったじゃないですかぁ」
そういいながら私を見上げてくる小松田君は、
すこしばかり久しぶりにちゃんと顔を見ることが出来たけど憎たらしくてたまらなかった。
そういうことはもっと早く、ちゃんと言ってくれ!
「小松田君大丈夫かい?」
「はい、まだチューしかされてませんから!」
「小松田くん…っ!!」
へえそう良かったよ間に合って、と目を細めて笑う土井先生と、
ようやく明るくなった部屋に安堵していつものようにへらっと笑う小松田君の二人を見つめ、
暗闇のほうがよっぽどマシだと嘆きながら私は心持泣きそうになった。
***
伝説の(?)アニメの「何するんですか」「何もしないよ」を現パロで書きたかったそれだけです…!
利こま初書きなのです、ドキドキです…!
利吉さん、ばちがあたったんだと思います。
でもまあ小松田さん>生徒ですよね、当然です^^←
土井先生はどSな王様宅の土井先生が理想です。
めとられたし(大マジ)
利吉さんが小松田さんを襲おうとすると、ひ土井あく土井なあのお方が阻止してくれると信じてる!