めもログ2

※赤タカ番外編(仙さまと赤タカ)/四月馬鹿上等(タカくくタカ現パロ)/君に問いかけあなたに問う(タカ丸)/添い寝希望(くくタカ現パロ)

 

 

・赤タカ番外編(仙さまと赤タカ)


黒い髪が手のうちからこぼれる。
艶めく髪は髪の一本一本がまっすぐ流れ、毛先まで傷んだところはひとつもない。
見事なものだ、と唇をぺろりと舌でなめた。


「俺、立花先輩みたいな綺麗な髪の人みると、惚れそうになる」
「惚れるのは勝手だが、お前の相手をしてやる気はさらさら無いぞ」

くすり、笑う声が聞こえた。
この髪も女みたいに綺麗な肌と整った顔もすごく好みなんだけどなぁ…
如何せん、上手くなびいてくれない。


「やっぱり作法は手厳しい」

俺もくすくすと小さく笑って返事をする。
綾部もこの人も、俺には落ちてくれないらしい。
まあ本気じゃないことを知っているからでしょうけど。


「でもそういうつれないとこも好きだよ、立花先輩」

上辺だけ甘い声で耳元でささやく。
立花先輩は鼻で笑って見事あしらってくれたけど。



黒い髪を一束、指に丸めてからませても、
あまりにもまっすぐなそれは俺の指からあっさりそっけなく落ちていく。


(あの人の髪とは違う)

あの人の髪は癖がつよいから、
こうすれば俺の指に絡まった黒い髪はそのまま残る。
そんな風にただ、こうやって髪を触ったのって多分、もうずっと前だ。
むこうがただの先輩だったとき、一度だけ髪を結わせて貰ったんだっけ。

あれからもう、一度だってあの人の髪だけを触れたことなんかない。
完全に順序が狂ってる。
第一、関係からして間違っているに違いないけど。


「おい斉藤、終わったか?」
「…ええ、終わりましたよ」

ああ、なんか思考がおかしな方向に向かってた。
先輩の一声で現実に引き戻された俺は、
鋏を置いて、櫛で立花先輩の髪をととのえる。

「できましたよ。あ、ついでに結いましょうか?」
「そうだな、頼む」
その言葉に笑みを交えて返事を返し、たっぷりな量の長い髪をひとつにまとめる。

その時、ふと白いうなじに目が言った。
正確にはうなじに咲く、赤い痕。
おや、俺が来ることを知っている人がいたのか。
じゃあこれは、警告の証だ。
手を出せばどうなることか分かってるだろうな?って意味。
まあこんなのつける人がいるなら、もちろん手は出さない。
面倒ごとはこりごりだからね。
でも、



「…先輩、」
「なんだ?」


自分でも重々自負している性格の悪い顔で笑う。


「そういうの好きなら俺でよければいつでも相手しますよ。
 俺も縛るのわりと上手だから」
「はっ?」
「その人に飽きたら俺のところ来てよ。待ってるね」

来ないことなんかしってるけど。
でもすまし顔が一瞬口をあけてぽかんとしたから、
可愛いなあと思ってタカ丸は笑みを浮かべた。


「じゃあその手首縛った恋人によろしくね」


髪結い道具もって立ち上がって戸を開けながらそういって、
慌てて手首の縛られた痕を見る先輩を一瞬見てから戸を閉めた。
そのあと「誤解だ!」と言う慌てた声が少しおもしろかった。




それにしたって、あんなに綺麗な髪に触れている間も、
あの黒髪を欲している俺はほんとうにおかしいよな。
一体どこで狂ってしまったんだろう。












 

 

 


・ 四月馬鹿上等(タカくくタカ)
  
 
テーブルに頬杖をついてタカ丸の部屋のきっと寮一番の大きさのテレビを見つめる。
画面からは深夜枠の安上がりなバラエティ番組が流れていた。
とくにおもしろいとは思ってないので、あくまで視界の中に入ってきてるだけ、という認識。
もともとタカ丸がこのあとの海外ドラマを見ると言っていたので、それまでの時間合わせのために見ていたもので、
出演しているマイナーな芸人もアイドルも、兵助にとっては興味の対象外。
兵助はもう先に寝ようかと考えながら、見慣れたCMが流れ出したテレビから目線をはずした。
向かいにはタカ丸が座っている。
頬杖をつく手に金色の髪がふわりと絡まっている様子は、どうも手を伸ばしたいと思わせる。
その髪の柔らかな手ざわりをよく知ってるからだろうか。



「兵助くん」

ぼんやりその明るい色を眺めていると、急にテレビに釘付けだったタカ丸が兵助を見向いた。
お互いの視線の先が交じり合う。
それでも互いに頬杖を解かないまま、しばしの沈黙。


「俺、兵助くんが嫌いだよ」


その沈黙をやぶったのは、なんとも唐突な告白。
兵助は顔を大きくしかめる。
その言葉を言うわりには、タカ丸の目は穏やかで柔らかで、まるで現実味を帯びていない。
口元には笑みさえ浮かんでいる。

まるで、
(愛してる)と告げているような表情。


あ。

タカ丸の背後のデジタル時計が00:15を示している。
日付が変わった今、今日は新しい月。
もうさすがに自分の部屋にある出しっぱなしのコタツは片付けるべきかなぁと頭の片隅で考えながら、
同時に目の前の年上の男の子供っぽさに笑えてくる。


「俺もお前が大嫌い」


今日なら憎まれ口が言い放題。
いつもなら歯が浮いていえない台詞の代弁をしてくれるのだから。




本日エイプリルフール。


ただ触れ合う唇で伝え合う熱だけが真実。








 

 

 

 

 

・君に問いかけあなたに問う(タカ丸)


人には向き不向きってもんがあるけどさ。

きっと俺は人を殺すのに向いてるんだと思う。
そして、あなたはきっと不向きだね。

真面目なあなたは冷静に人を殺すことはできても、
不器用なあなたじゃ切り替えることができないでしょう。

誰よりも真面目なあなたはいつまでもその血にその感触に光景に、
捕らわれ続けているのでしょう。

誰よりも不器用なあなたはそれでも強いところしか見せようとせずに、
独り耐え続けているのでしょう。


「ねえ、もうそんなことしなくたって、いいんだよ」


どうしてこの道を選んだのか、選ぼうと思ったのか。
俺はそれをしらないしきっとあなたも教えてくれないんでしょう。
些細なつまらない理由さ、と下手糞な笑顔で無理やり取り繕うんでしょう。

あなたは忍者になりたいんだろうか。
忍者になりたいと、思ったことがあるんだろうか。


「もっと幸せになれる方法はいくらだってあるんだ」


町の生活を捨ててここに来た俺がいう台詞じゃないかもしれないけど。
俺はここに来てよかったと思ってるよ。
だって、あなたに会えたじゃない。

それに俺はあなたより真面目じゃあないけれど、
それでもあなたよりずっと器用だから。


「君は幸せ?」


人を殺して、その屍を乗り越えた数だけ、きっと捕らわれ続けるあなたは。
我が身を守るため、というもっともらしい理由だけを糧に耐え続けるあなたは。
どこでどう死んで、その瞬間に幸せだったと感じてくれるのか。

いまを後悔せずに死ねるのか。
人を殺めるための両手を、冷酷な思考を養うためのこの場所を。
そのためのいまを。


「……ねぇ」


首をかしげて問いかけると、
向かい合う黒い眼が不思議そうにこっちを向いた。
俺は小さく微笑んで、指先でおいでと誘う。

あなたによく似たその子は、
ちょこんと庭にすわってぴくんとしっぽを振るわせて俺のところへやってきた。
どうやら機嫌が良いみたい。


「君が幸せなら、俺も少し、幸せなんだ」


だってあなたに似てるから。

本人にはとてもじゃないけどこんなこと言えないよ。
俺にはそんな勇気はないもの。
こんな言葉であなたを傷つけることは、できない。


「ねぇ、幸せかい?」


きっと人を殺したことのない君は幸せかい?
きっと小さな獣を殺したことのある君は幸せなのかい?

君に幸せの定義があるのならばお答えいただきたい。

美しい黒い髪と黒い眼がとてもあなたによく似ている君。


「幸せかい?」


抱き上げてそう問いかけると、
その子はひげを震わせて口元から白くて尖った牙を見せ、
にゃあんと一声鳴いてみせた。

そっか、幸せなんだ。


「俺も幸せだよ」


抱き上げて指先で肉球をつついてあげると、
くすぐったそうに身をよじってしっぽを振った。
その反応もあなたによく似ていて、なんだか君がいとおしくなってきた。


「ねぇ、あなたは、幸せになってくれますか」


黒猫はなごなごと喉を鳴らすだけで答えはしなかった。

それでいい。
君があなたの代わりになるなんてこと、ありはしないのだから。



 

 

 

 

 

 

 

・添い寝希望

「へーすけくぅん」

「あー?」

「今日一緒に寝てっ」

「…お前また三郎とホラー映画見たのか」

「…あは」

「寝れなくなるくらいなら見るなって言ってんだろ!」

「いやほんとすごかったの!!だって首が…!……ね、お願い!」

「……仕方ないからいいけど、」

「わーいやったぁ!じゃあおじゃましまーす!」

「お前体温低っ!ってどこ触ってんだよ!」

「いいじゃん、ぎゅーってさせてよ!別に何もしないから」

「……(だから嫌なんだよこの抱き枕状態…)」

「おやすみー(兵助くんあったかいなぁー…意外と子供体温なのかな)」

「ん……(なんつーか…こう…おあずけ?軽い拷問?)」

「…(兵助くんもぞもぞしてるー…我慢しなきゃいいのに)」

「…(でもこいつはその気じゃないんだろうし)」

「(誘ってるの、気づかないかなぁ)…兵助くん」

「…寝ろよ」

「んー、ねぇねぇへーすけくん」

「(耳もとで喋んな)……んだよ」

「(お、ちょっとキてる?)なんかさぁ」

「(あーもー寄るなっ)…」

「俺、ムラムラしてきたんだけど」

「………は?」

「だめ?」

「…今は(抱かれる)気分じゃない」

「(うん、分かってるよ。だからさぁ、)抱いて」

「……」

「(あ、びっくりしてる)ねぇってば」

「…いや聞こえてるけど、」

「じゃあ抱いてくれないの?」

「…お前な」

「ねぇ抱ぁーーいぃー、っん…」

「(…うるせぇ)」

「(あー…あったかい)」