火薬家族(家庭円満編)/痴話喧嘩(先に折れるのはどちら編)/痴話喧嘩(折れないのなら強硬手段編)/ろじ→タカ(年齢操作二年後)
・火薬家族*焔硝蔵の掃除を終えて、家族みんなで入浴タイム
(顧問がいないのは髪を毟られる云々の問題だと思われます)
「タカ丸さーん、まだ汚れとれてませんよ」
「ほんとー?」
「ここです。あっ、ついでに背中洗いましょうか?」
「ありがと!じゃあお願いします。
代わりにあとで伊助ちゃんの髪あらってあげるね」
「はーい!ありがとうございます」
「なんだろう、嫁と子供を眺めている気分になる」
「亭主関白宣言ですかそれ」
「…三郎次、背中流そうか?」
「結構です」
「(反抗期だなー…)」
「違います」
「…」
「あ、兵助くんと三郎次くんも髪あらってあげよっかー?」
「じゃあ頼む」
「俺を家族ごっこに巻き込まないでください」
「家族ごっこ?」
「いいねぇそれ!
じゃあ兵助くんは俺のとこに婿入りしてね」
「? こないのか?」
「だって久々知タカ丸より、斉藤兵助のほうが語呂がいいもの、ねぇ?」
「じゃあ僕は斉藤伊助ですね!」
「俺は池田三郎次です!」
「あれ、反抗期?」
「だからっ違います!(ってんでしょうが、この馬鹿夫婦!)」
・痴話喧嘩(先に折れるのはどちら編)
委員会の仕事の内容はいつも通り。
もちろん委員会のメンバーも、会議で顧問がいないことをのぞけばいつも通り。
ただいつもと大きく異なる点は、
「委員長代理」
目を細めて唇をつりあげ、首をかしげて愛嬌たっぷりに笑うタカ丸の、
今までは言ったことのないその代名詞がやたら強調され使われていることだった。
「委員長代理ー」
「…お前いつまでも拗ねるなよ」
「なんのことですかぁ?委員長代理」
「それやめろ」
「…ふぅん、それが人に謝る態度ですか委員長代理」
「…ごめんってば」
「委員長代理」
「……タカ丸、ごめん」
「………俺、怒ってんだからね」
タカ丸は拗ねたように唇を尖らせたものの、
ばつの悪そうな顔をしている兵助を確認すると、
満足したようにぱっと笑った。
「今度からはもっとちゃんと名前呼んでよね」
「ん、分かったからお前もその面倒くさい呼び方やめろ」
「あー!またお前って言った!」
「はいはい…、タカ丸、名前呼んで」
「はーい兵助くんっ!」
「あーもー、抱きついてくんな!」
「だって全然名前呼んでくれないんだもん!俺寂しかったんだよ!?」
「わかったから!離れろ!」
「やだー!」
「仕事しろよ…!」
「先輩、諦めましょ」
・痴話喧嘩(折れないのなら強硬手段編)
伊助が壷をわっちゃいました。
「あ、伊助ちゃん、触っちゃだめ!」
「でも僕が割ってしまったんですし、」
「だめ!危ないからだめ!」
「そうだぞ伊助、触るな」
「ちょっ兵助くんもだめだよ!俺がやるから!」
「阿呆か、お前に任せる方が危ない」
「言えてます」
「えっ三郎次くんまでひどくない!?」
「とりあえず俺が拾うから」
「だめってば兵助くん!」
「うるさ、っ」
「あーー!だから言ったじゃん!切ってるじゃんっ!」
「お前がいちいちうるさいからだ!」
「人のせいにしないでよ!
もうっ、それより早く、保健室!」
「このくらいで行くか!」
「だめだよ、ばい菌はいっちゃう!」
「いいって」
「だめだよ!前、俺が手切ったときは連れてってくれたじゃん!」
「お前は髪結いもしてるんだから当たり前だろ!」
「兵助くんの手だって大事だよ!」
「俺はいいんだよ!」
「よくない!何で分かってくれないの!?」
「だから、俺はお前よりもこういう傷にはずっと慣れてるし、」
「(むかっ)………伊助ちゃん、」
「へ?っうわぁ!」(目隠し)
「お前なに…んっ!?」
間
「………(呆然)」
「俺の言ってること、おわかり?(満足気)」
「………ば、馬鹿お前、何…っ!!(真っ赤)」
「さ、早く行こ、保健室」
「いや片付け…!ちょ、待てって、おいタカ丸っ!」←強制連行
「…………えっ今、なに…?」
「…もう、勝手に、してください」
・ろじ→タカ(年齢操作二年後)
「三郎次くんの髪、綺麗だねぇ」
不意に、後ろ髪に指先が触れた。
その行為にはいい加減もう慣れたもので、
ため息とともに「そうですか」と素っ気無い返事をして仕事を続けた。
「俺があげたシャンプー使ってる?」
「…さあ」
「使ってるよ。匂いで分かる」
「じゃあ聞かなくていいでしょう。
それより仕事さっさと終わらせてください」
「終わったもーん」
その言葉に振り返って目線を上げると、
タカ丸さんは目を細めてほら、と在庫表を見せてきた。
確かに終わってる。
この人、なんだかんだいっても、要領はいいな。
俺は早くと仕事を終わらせたくて再度タカ丸さんに背を向けると、
さっさと帰ればいいのにタカ丸さんはまたしても髪に触れてきた。
職業柄か、癖か、習慣か、気まぐれか。
どうでもいいけど鬱陶しい。
「伸ばせばいいのにー、勿体無い」
「……嫌です」
「長いのは嫌い?」
「俺は、」
「あの人の代わりじゃないですよ」
呟いてから、背を向けたままでもタカ丸さんが驚いたのが分かった。
指先の動きがぴたりと止まり、そして離れた。
どんな顔をしてるのか、そう思い、僅かに振り向いて肩越しに覗くと、
タカ丸さんは金髪のしたでそっと笑っていた。
「三郎次くんは代わりなんかじゃないよ」
その声の柔らかく静かなこと。
思わず目を見開くと、タカ丸さんと目があった。
タカ丸さんはそう言うだけ言って、じゃあお先にとくしゃりと俺の前髪を撫でて、
たいした足音も立てずに焔硝蔵から立ち去っていった。
暗に、あの人の代わりなんてお前にはできないと、そう言われた気がした。
それがどうした。
突き放された、逃げられたと思うくらいなら言わなきゃいいのに。
どうしてため息をつく必要がある。
「…馬鹿らしい」
***
火薬暴走期でした。