週末の夕方

 

(あ、やば…寝てた…)
 
 
朝から珍しく病人の看病なんてしてたせいだろうか、
いつものまにか寝入ってしまっていたようだ。
薄く目を開けると視界には天井が映るはずなのに、目の前で揺れるのは黒い髪。
 
 
「!?」
 
 
唇に体温。
はっとして目を見開くと、唇を何度も啄ばむように口付けられていた。
離れては触れ、舐めとられるように繰り返され、
びくりと身体を震わせると、タカ丸が起きたのに気づいたらしい兵助と目が合う。
兵助は頬を赤くして、惚けたような目をしていた。
 
 
「兵助くっ…、なにして、んの」
「熱い」
「ふぅっ…、っだめだってば、大人しく寝てて!」
「どうにかしろ」
「お薬飲んで眠れば、良くなるから!ん、…だめっ」
 
 
目を覚ましたのことでさらに口付けに拍車がかかる。
熱い舌が侵入してきて、逃げようとしても追いかけてくる。
タカ丸は兵助の肩を掴んでそれを拒む。
一応病人である彼は、案外簡単に押しのけることができた。
 
 
「兵助くんっ」
 
 
少しばかり手荒に、身体を起こす勢いでそのまま兵助を押し倒す。
広めのベットの上を二人で転がり、兵助に跨ったタカ丸は低い声で名前を呼ぶ。
兵助は行き場の無い熱が疎ましいらしく、期待を込めた眼差しで見上げた。
 
 
「…あんたね、今病人だって分かってる」
「いい」
「俺が良くないよ」
 
 
呆れたようなため息を落とし、タカ丸は体重をかけていた両肩から手を離し、兵助の上から降りた。
それを追う、兵助の恨めしげな視線が後頭部に突き刺さることは分かっているけれど、
38度の熱が出ている人間に襲い掛かるようなことはしたくない。
 
 
「大丈夫、だし」
「これ以上は俺が大丈夫じゃない。
 もし次やったらこの部屋から出て行くからね」
「…嫌だ」
 
 
きゅっと袖を掴まれて、寂しそうな目で縋るように見つめられる。
そういうのも、あんまり大丈夫じゃないのに。
 
 
「…じゃあもうしないでね」
「ここに、いる?」
「いるよ。ほら、手握っててあげるから」
 
 
だからおやすみ、と冷えぴたの上の前髪にキスをすれば、
お前からはいいのかよずるい、と拗ねた声で毒づかれた。
 
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***
久々知誘い受け。むしろ襲い受け…
タカ丸はこれだけ我慢したのに久々知容赦ない(笑)