タカシャッフル

※なんやかんやで金・赤タカ丸が入れ替わったらという妄想のお話。
  なんやかんやはなんやかんやです。…便利な言葉!(いい加減100%)

金タカ…兵助くん・久々知くん・基本明るいけど天然の底意地の悪さあり
赤タカ…久々知先輩(兵助)・兵助先輩・自覚のある性悪Sだが時々へタレ
兵助くん(金)…タカ丸・お前・金タカに甘い
久々知先輩(赤)…斉藤(タカ丸)・あんた・天然男前 

 

 



1 金タカ+久々知先輩
 


縁側に並んで二人でお茶。
よくあることだけど今日はほんの少し、相手が違う。
その違いはとても複雑で難しくて、馬鹿な俺にはよく分かんないんだけど、
隣にいる兵助くんは俺の知っている久々知兵助くんじゃなくて、
その久々知兵助くんの知っている俺は俺じゃないらしい。

「…変なの、ね。久々知くん」
「まぁいいんじゃない、たまには」

同じ横顔で同じ声だけど、こっちの久々知くんはなんていうか、どっしりしてる。
いつもと髪の色が違うらしい俺を見ても、ちょっぴり瞬きを多くして、
そのあと「お前、誰?」と平淡な声で問いかけてきたツワモノだ。
おかげで俺も久々知くんが兵助くんじゃないって分かっても、思いのほか落ち着いていることができたんだけど。
兵助くんならきっと大慌てでびっくりして落ち着いてなんていられないと思う。
そういやあっちにはこっちの俺が入れ替わっちゃってるのかな?
ちょっと心配だなぁ。

「ねぇ、久々知くん。
 こっちの斉藤タカ丸って、どんな奴?」
「…すごく性格悪くて、タラシで手が早い」
「嘘!えっ…兵助くん心配になってきたんだけど…」
「ん……まぁ、大丈夫、かな。…うん、大丈夫」

久々知くんはぽん、と俺の頭に手を置いて優しく髪をなでた。
驚いて目を大きくすると、久々知くんは唇に少しだけ笑みを浮かべる。
でも、落ち着いた瞳が少しだけ不安そうに揺れていた。
まあこっちの俺はいろいろ前科があるみたいだから、
気移りしないか心配なんだろうなぁ。

「…あ。髪の色は全然違うけど手触りいいし、やっぱ似てるな」
「ほんと?こっちの俺は赤髪なんでしょ、それもいいなぁー」
「あんたにはこっちの色のが似合ってると思うけど」
「ほんとー?へへ、ありがと」
頭の撫で方、委員会で頑張ったときに褒めてくれる兵助くんのと同じだ。
やっぱり久々知兵助っていう人なんだなぁと実感する。
そう思って自然と笑みがこぼれた。

「…なんかあんたは可愛げあっていいな」
「え」
「可愛い」
「…久々知くんはなんてゆーか…かっこいいね」
「そんなことないけど。 あっちの俺は違うか?」
「んー兵助くんもかっこいいけど…ちょっと可愛いかな。
 それに俺に向かって可愛いなんていわないし」
「ふうん」

目を見て喋るところ、声、体は同じなのに、
こうも落ち着いててつかみ所のないのはやっぱり兵助くんとは違う。
けど、

「久々知くんも俺、好きだなあ。
 こっちのタカ丸はもっと久々知くんのこと大好きなんだろうけど」
俺の言葉に、久々知くんは少し目を大きくする。
表情の起伏は兵助くんほど分かりやすくないけれど、分かった。
黒い前髪に指を絡めて笑いかける。

「俺と同じで多分、やきもち妬きだと思うから、秘密ね?」

額に掠める程度の口付け。
あなたが幸せでありますようにっておまじないだよと言うと、
久々知くんは驚いたような表情を崩して小さく笑った。

「あっちの俺は幸せそうだな、あんたみたいなのがいて」
「こっちの俺も幸せだと思うよ、久々知くんのおかげで」

そういって目を合わせて、俺たちはお互いに笑いあった。







 

 



 

2 赤タカと久々知先輩
 
   
「だからぁ、俺と金髪の俺は別人であなたは俺の知ってる久々知先輩じゃないのー
 あ、そーだ、紛らわしいから兵助先輩って呼んでいい?」
「…勝手にしろ」
「じゃあ兵助先輩!
 兵助先輩さ、いい加減諦めなよー
 時間たてば多分もどるしさぁ、俺と遊ぼうよ、ね?」
「うるさい」

全く別人で髪色は違えど声も顔も知っている斉藤タカ丸と同じ。
このいい加減飽き飽きするほど聞かされても聞き返してしまうこの男の説明に、
ようやくため息をついて納得した素振りを見せる。
納得なんかできるか。
いつもと同じ声で、呼ばれたこともない「先輩」という呼称は気持ち悪くて仕方が無いし、
いつも以上に軽い口調に対する嫌悪感は湧き上がって止まない。

「ねーねーこっちの俺どんな感じなの?」
「お前よりは可愛気ある」
「ふーん、じゃあさあ、俺にはときめかないわけ?」

誰が、と吐き捨てると、拳一個分の距離をおいて隣の赤髪の男は、
兵助先輩も久々知先輩並に容赦ないねぇと笑う。
その横顔は、先ほどまで見せていたようなものではなく、
もっとまっすぐで、よく知っている斉藤タカ丸のものとよく似ていた。

「まあ安心してよ、取って食ったりしないから。
 俺が好きなのはあの人だけだからさ」
「…ふうん」

なんだ。
やっぱり、斉藤タカ丸なんだ。
同じ横顔に愛しそうに誰かを想う瞳。
遊び人みたいな雰囲気のなかに、あまりにも一途な部分を見つけ、
思わず食い入るようにその男を見つめていると、不意に目線がかち合った。

「なに、見とれてんの?」
「はあ!?違…っ」
「そっかー兵助先輩は斉藤タカ丸の顔が好みって訳ねー」
けらけら笑うその顔は、やっぱり可愛くない。

「ああもう!お前、さっさと帰れ!」
「帰りたいけど帰れないんだもん。
 あ、でも兵助先輩はいいよね、どっちでもいいでしょ?
 仕方ないなぁ、顔だけでいいなら貸してあげるよー」
「そんなわけないだろ!
 俺が好きなのはタカ丸だっ…け…」

途中まで大声で言って、目の前のしたり顔で我に帰る。
こいつ…おもしろがってやがる…っ

「ふふっ、やだなぁー惚気ないでよ」
「お前ほんといい性格してんな…!」
「あは、褒め言葉として受け取っておくー」
「~っうるさい!!いい加減黙っ、」
れこのやろう。
という言葉が続くはずだったのに。

「おまっ…!」
「うるさいのは兵助先輩だから」

にんと笑う唇、俺の髪をくるりと弄ぶ指。
見慣れているのにあきらかに違う別の男に、
どうして、どうして唇を奪われねばならんのだ。
 
「そういうの、最悪だぞ…っお前…!」
「いや、これは浮気の範疇に入らないかなぁと思って。
 まあさ、とにかくもうすぐ帰るからさ、そう嫌わないでよ」
ちょっとは傷つくんだよ、その顔で、声で言われるとさ。
そう呟いた表情は長い赤髪で見えなかったけど、やっぱり納得いかない。

「お前なんか大っ嫌いだ!」

 
 
 
 







 
3 赤タカくく
 
 
 
「わっ」
「お」
先ほどまで金髪のタカ丸が座ってた場所に、唐突に赤髪のいつもの姿が現れる。

「もう帰ってきたのか」
「…なんでつまんなそうなの、先輩」
怪訝な目でタカ丸が問うと、兵助はいや別にと空を見上げた。
少しは寂しがってくれてると思ったのに、とタカ丸は息をつく。

「よくわかんないけどさ、俺今まで違う久々知兵助先輩と一緒だったんだよ」
「さっきまでここにもいたぞ、斉藤タカ丸」
「え、金髪の?…へぇ、どんな感じだった?」
「可愛かったよ、お前と違って」
「それ兵助先輩にも言われたー」
「ふーん…あっちの俺は?」
「可愛かったよー先輩よりもからかい甲斐があって。
 おかげで大っ嫌いだって言われちゃったけど」
「お前ほんと性格悪いな」
「知ってるでしょ?」

笑うと同時に、タカ丸は腕を伸ばして兵助を抱き寄せた。
腕の中に収められた兵助も背中に腕を回し、ぎゅっと抱き合う。


「なぁ…、」

(心変わりなんて、してないよな)


そんなことこの男には言わずとも分かるだろうから、
兵助は胸のうちだけでそっと問う。
背中に回した腕に力を込める。
胸元に顔を埋めているから見えないけれど、
兵助は確かにタカ丸が頭上で笑っているような気がした。

「兵助先輩は好きだよ。
 あなたと同じ久々知兵助だから。
 でも俺が惚れてるのは兵助、一人だけだよ」

まっすぐな声だった。
それがあの金髪の奥に見えた一途な目のタカ丸のものとやはり似ていて、
ああやはり基盤は同じ人間なんだろうなと思った。
それでも、

(俺が惚れてるのもお前だけだ)

声にするのは煩わしい。
そんなことしなくても知られているに決まっている。
兵助は胸元に額をあてて、小さく息をついた。


「…で、お前あっちの俺になにした?」
「……え?」
「お前が何もしないはずないしな」
「あはー…浮気じゃないよ?」
「いいからさっさと白状しろ」
「えっとね、接吻しちゃっ…痛い痛い!髪引っ張んないでよ!」
「自業自得だろ」

掴んだ長い前髪を引っ張って、強引に距離を詰めた。
奪った唇がそっと笑ったことには気付いたけれど、構わない。

兵助も同じように笑ってやった。
















4 金タカくくタカ
 
 
「わ、戻った」
「っタカ丸!!」
「兵助く、ん!?ちょっ苦し…っ!」
飛びついてきた兵助の腕がきつく首を絞めるものだから、
タカ丸は思わずその背中を叩いて抵抗する。
ずいぶん熱烈な歓迎だけど、一体なにがあったのだろう。

「もうやだ何あれ何あいつ…!」
「あ、赤髪の俺いたんだやっぱり。どうだった?」
「性格悪いし、最悪っ!」
「うーん…ほんとにろくでなしだなぁその俺……、複雑」
タカ丸は苦笑しながら、首筋に埋まった同じように綺麗な黒髪をなだめるように優しく撫でる。

「…お前も違う俺のところに行ってたのか」
「うん!あっちの久々知くんね、落ち着いてて大人っぽくてかっこよかったよー」
「それは俺に対する嫌味?」
兵助は顔を上げて、ふてくされたように顔をしかめる。
多分、久々知くんならしないだろうなぁと思わせる表情だったが、
でももしかしたら、性悪の赤い髪の斉藤タカ丸ならできるのだろうかとぼんやり考えた。
小さく笑みがこぼれる。

「兵助くんはかわいいなぁー
 どんな久々知兵助くんも俺は大好きだけど、
 でもね、俺が愛してるのは兵助くんだけだよ」
「…知ってる」
「うん、知ってるよ」
呟いて俯いた頬がきっと赤いことも。
それは口にせず、心の内で呟いて、愛しさを感じて笑みを浮かべた。


タカ丸は兵助の柔らかく艶やかな髪を1束指先で弄りながら、
あぁそうそうと思い出したように言った。
その言葉に兵助は「なに?」と顔を上げる。

「ね、1つ聞きたいんだけど、
 あっちの俺に何もされてない、」

よね、と言いかけたのだが、急に兵助がたどたどしく目線をそらすものだから、
タカ丸のその言葉は声にならず、代わりに大きく目が見開かれた。

「…何されたの、どこまでされたの。ねぇ」
「(目が笑ってない…!)」
「久々知くんから手ェ早いとは聞いてたけどっあいつなにやったの!?」
「や……あの、……接吻を……」
「嘘!?」
「いやっ不可抗力だし…っ!!」
「なにそれー!俺、でこちゅーしてないのに!?」
「…はあ!?お前もなにやってんだよ!!」
「兵助くん!あんなやつになにされてんのさ!」
「ちょっと待て!お前言ってること無茶苦茶だぞ!?お前もあっちで、」
「ああやだっ!消毒ーー!」

タカ丸が無理やり唇を奪う。
塞いだ口から「そんなに長くない」と途切れ途切れに兵助が呟いた言葉は、
生憎タカ丸には聞こえなかったのか、それともそう装われたのか。
とにかく、そう簡単には終わらなかった。
酸素不足を訴えて胸を叩く手を封じるように、タカ丸は兵助の背中を強く抱きしめる。


(もしいつかあの斉藤タカ丸に会ったら絶対シめてやる!)










 

 

 

 

***

私だけが楽しいこのパターン

お付き合いありがとうございました!