連日続く真夏の天気。
「アイスたべたいね」とタカ丸が呟いたのをきっかけに、
少しでも涼しくなるのならと一抹の希望にかけて2人で近くのコンビニまで買い物に出かけたのだが、
その道の往復を歩くというだけでずいぶん汗をかいてしまい、かえって逆効果。
こうなることなら部屋の電気代半分もつからクーラーつけてくれとでも頼んで部屋で大人しくしていればよかった。
兵助はむわっとした熱気の立ち込めるタカ丸の部屋のドアをあけながらそう思った。
「アイスー!はやく、アイス食べよう!」
部屋に入るなり、もう溶けかけてるかもと慌しく袋をあさるタカ丸は、
涼を手に入れることよりも純粋にただアイスがたべたかっただけなのだろう。
まとめ買いのおかげで重量感たっぷりのビニール袋のなかから目当てのものを手にしたのか、
タカ丸は嬉しそうに白いソファーに横になった。
兵助は独占するなと呟くが、俺の部屋だもんと言われてしまうと返答しがたい。
いくら泊まりにくる日数が多いといえど、ここの部屋の主はタカ丸なのだ。
兵助は、その主がクーラーのリモコンを押すピッという機会音に安堵の息をつきながら、
ビニール袋を冷蔵庫の下から2番目の一番冷たい空間にしまいこみ、ついでにひとつ、アイスを持ってかえる。
「兵助くんはなに食べるの?」
「ハーゲンダッツ」
「わぉ、リッチだねぇ」
バニラ味のそれと添えられていたスプーンを手にし、
仕方がないので、兵助はローソファーの一面をつかって寝転ぶタカ丸の前に腰を下ろす。
カップのふたをはずしながらタカ丸の腰を背もたれ代わりにすると、くすくすとくすぐったそうな声が漏れた。
それがおもしろくてわざと場所を変えてぐいぐいと背中をもたれさせると、
「くすぐったいってばぁ」と間延びした笑い交じりの声で文句を言われた。
兵助は小さく唇の端に笑みを滲ませながら、ひとくち、冷たいアイスの表面をすくって口にする。
ほどよい甘みと冷たさを感じ、じんわりそれが舌の上でとろけていくのを味わった。
もうひとくち、とスプーンでアイスをけずろうとした時。
斜めうしろから小さく響いたちゅるりという音が兵助の鼓膜を振るわせた。
舌を這わせる音、すでに半分以上食されたソーダアイスを口に含んでは、
ちゅっと口付けするような音をたてて唇を離す。
否が応でも聞こえてきてしまうそれに、兵助は恨めしげな目で背後のタカ丸を睨んだ。
「…うるさい」
「えぇ?なんのこと?」
ぜったいわざとだ。
にっと笑う顔の性悪なこと、この上ない。
兵助はタカ丸を睨んだまま、テーブルの上に食べかけのアイスのカップとスプーンを置く。
タカ丸はそれに目を細めた。
「ひとくち」
それくれ、と兵助はタカ丸のアイスを顎で指す。
流れ落ちてくるソーダの一筋を舌で拭いながら、タカ丸はにっと笑みを返した。
「なぁに、そんなに俺と、キスしたいの」
タカ丸は兵助の目の前に食べおわりそうなソーダアイスを差し出した。
兵助はさいごのひとくち分のソーダアイスを、くちゅっと音をたて口に含み、舌の上でゆっくり溶かした。
バニラの後味とソーダの甘さが口の中で混ざり合って、舌を冷やす。
「ねぇ兵助くん、
そんなんじゃあ物足りない、でしょう」
間接きす程度じゃあ、ねぇ?
身体を起こして兵助に顔を接近させ、
細長い華奢な指をシャツの襟元に忍ばせてくいっと引っ張る。
汗で湿った金髪のむこうのその目、笑うきれいな顔。
もっと近くで、いっそピントがあわなくなるくらい近くで見たい。
そう思ったが、それ以上はなく、
タカ丸はにっと笑って、襟にかけた指を肌につ、と滑らせた。
誘惑する、熱を帯びた瞳。
兵助はその目線を睨むように見つめながら、
金髪の指どおりのいい後頭部に手を伸ばして引き寄せ、タカ丸が縮めなかった分の距離を詰めた。
唇同士が触れ合う距離になると、タカ丸がそっと笑って目を瞑る。
それを追いかけるように兵助も視界を閉じて、触れ合う舌を絡ませた。
暑さが増す。
冷ましたばかりの舌がとろとろと熱を帯びてとろけそう。
それでも長い間、冷房がききはじめたばかりの一室には、ちゅ、とさっきと同じ音が響いていた。
「…アイス溶けちゃうよ」
タカ丸の唇を離したあとの開口一番の言葉に、兵助は「うっせ、黙れ」と毒づいた。
煽っておいてよく言う。
大成功とばかりに、満足げに愉快そうに笑う顔が癇に障ったものだから、
ソファーに転がるタカ丸の上に覆いかぶさり、兵助は笑みをこぼすその唇を黙らせた。
背後で甘く、アイスが溶ける音を聞きながら。
***
夏プロジェクトリクエスト くくタカ×アイス
ん?くくタカ…?いや、うん、ばっちし誘いうけのタカ丸です、ええ。
誘い受けのタカ丸さんがとても好きなのです…趣味にはしってすいませんでした^^;
さすがにバナナアイス食べさせるのは自重してみたのですが、
結果としてはいろいろ自重できてないかんじでごめんなさい。
タカ丸が出そうとして色気だすと、すごく艶かしいと思うんです…!
久々知はけっこうむっつり……いやだって、思春期だもん、男の子だもん…!(黙ろうか)
夏だというのにひたすらべたべたいちゃこらしつづけてるバカップルでほんとすいません。
でもとても書くのが楽しかったです!
Haraさん、リクエストありがとうございました!