綾部喜八郎の段その後妄想(綾+タカ)/兵助の執事(夫婦+鉢)/4年後シリーズ番外庄伊/夏の馬鹿(くくタカ+鉢)/ピロートークはある意味2回戦(タカくくタカ)
・綾部喜八郎の段その後妄想(綾+タカ)
「だからそんなにぼろぼろになるまで蛸壺掘ってたんだ。
俺も落っこちちゃったよー」
「おやまあ。それはすいませんね。
怪我は、なかったですか?」
「うん、大丈夫。
それにしても学園長もひどいねぇ。
名前わざと間違うなんてさ」
「胸くそ悪いですよ。
綾取りとか綾丸とか綾綾とか…」
「そっかぁ…でもさぁ、」
「?」
「んー、えへへ」
「なんですか?でもさぁ、なんです?」
「いやぁね、あのね、」
「綾丸って名前だとさ、なんか俺の兄弟みたいだと思わない?」
「……(無言でぎゅーっと抱きつく)」
「(可愛い!)綾ちゃんみたいな弟ほしいなー」
「私はタカ丸さんみたいな頼りない兄はちょっと」
「そんなこと言わずに。
あ、お風呂行こっかー、髪洗ってあげる」
「…はーい」
・綾善
今日は珍しく平和だ。
医務室には患者の姿は一人も居らず、
保健委員会委員長がただひとり、薬品の整理をしていた。
ぎんぎーんやいけいけどんどーんの声が聞こえてこないのに安堵しつつ、
伊作はぱたん、と片付け終えた薬箱のふたをとじた。
喧嘩や事故や自主錬や授業中の事故なんかでいつもあわただしい一室が、
きょうはなんだかがらんとしていて静かだ。
「先輩」
ふと、医務室の入り口から声をかけられて、
その声に伊作は柔らかく笑みを浮かべて振り向いた。
「綾部、どうし、っわ!」
のそのそと歩いてきた綾部が、
据わっていた伊作の前で立ち止まったかと思えば、
ふらりと崩れるようにしてもたれこんできた。
あまりに唐突なそれに、伊作は目を見開く。
「どうしたの、怪我?お腹でも痛い?頭痛、それか、」
「せんぱい」
名前を呼ぶ声は甘えるような声音だった。
もたれこんだ体制のまま、
しなやかに筋肉のついた自分よりも細く白い腕を回され抱きしめられ、
伊作は見開いた目をもう少し、さらに大きくして、困惑した顔をした。
「綾部、どうした…?」
「…病気や怪我でなければ医務室に来てはならないんですか」
「え、」
綾部はぱっと距離を離した。
しかし、腕は未だ伊作の首にまきついていて、
項のところで両手を絡ませて中腰になり、綾部は伊作を見つめる。
大きな猫のような眼に瞬きさえせず強く、じぃっと見つめられると、
いつも逃げられなくなるんだよなぁと伊作はぼんやり、
その目に引き込まれながら、頭の隅で考えた。
綾部は拗ねたように尖らせた口を動かし、小さく呟く。
「かまってもらいに来ました」
表情はそれほど変化してはいないのだけれど、
わずかに細められた目が求愛を表しているように思えて、
伊作はばっと顔を赤くした。
「かまってください」
「わわっ、ちょ、あや…!」
うるさい口は塞いでしまえ。
そうとばかりに綾部は漏れる声ごと唇を塞いだ。
一回り大きな手が紫の袖をつかむ。
伊作は驚いて焦って目を閉じるのさえ忘れていた。
間近でよく見た髪には、いつもより泥や砂が絡まっているのが見えたけれど、
それを気にする間もなく、侵入を許してしまった舌に小さな悲鳴をあげたのだった。
・兵助の執事(夫婦+鉢)
「似てるよなー」
「あ?…なに」
「だって家事全部こなして料理うまくて気がきいて、
あほみたいに献身的で兵助命ですみたいなとこ、
あいつ執事向きじゃね?」
「ただいまぁ」(タカ丸登場)
「あ、おかえり」
「あー三郎くん、来てたんだ。
そうだ、今日ご飯たべてくー?
雷蔵くんとか竹谷くん呼んでもいいね。
あっ今日の献立はねえ、兵助くんリクエストのあんかけ豆腐だよ~
ハラミとトマトのサラダと、冷静スープもつけて…
あ、これ兵助くんの好きなメニューなんだけど、
三郎くんはだいじょうぶ?」(エプロン着用しながら)
「……あー訂正。ただの嫁だな、これ」
「へ?」
「うるさい」
「ま、よかったな。
執事とご主人様って恋愛禁止なんだぜ。
欲求不満になってあやうく主従プレイに、」
「三郎、まじ、死ねばいい」
「? あ、ねー、ドレッシング作るんだけど何味がいー?」
・4年後シリーズ番外庄伊
「恋愛って難しいねー」
重々しいため息を交えて、伊助が呟いた。
使い古した忍たまの友に額を付けて悩んだような表情を浮かべる伊助に、
隣でともに課題をこなしていた庄左ヱ門はすこし目を見開く。
「…おや、うまくいってると思っていたんだけど、僕ら」
「何て恥ずかしいことを冷静に言うの、庄ちゃん」
「何を今更。で、なに」
「…三朗次先輩のこと」
庄左ヱ門はその答えに、あぁ、と納得したように頷いた。
あの先輩については伊助からよく話に聞いている。
「この前、町で会ったんだって」
「タカ丸さんに?」
「うん…そのあと、まだあの人は久々知先輩とちゃんと夫婦やってるって、
馬鹿みたいに変わらずいちゃついてるって笑ってさあ…
あの人も、馬鹿だよ」
そう言って、うつぶせたまま、伊助は唇を尖らせて眉を寄せた。
「タカ丸さんが卒業してから気付いたなんて、遅い。
諦めるつもりだろうけど、傍から見ていてなんか、切ないよ」
「でも伊助はタカ丸と久々知先輩が今でも変わらない仲だと聞いて、
正直どう思ったの」
庄左ヱ門にそう問われて、伊助は眉根を寄せた。
「僕は、」と反射的に開いた口が途中で言葉を失う。
伊助はまっすぐに見つめてくる庄左ヱ門の視線に目を伏せた。
「…僕は、久々知先輩が卒業した後から、
あの人がタカ丸さんに惚れてるって分かってた。
分かってたけど言えばあの人がどうするか分からないから言えなかった。
二人にはそのままで居てほしかったし、
まだ仲が続いてるって聞いたときは、嬉しくてたまんなかった。
でもさ、やっぱりさ、タカ丸さんも久々知先輩も三朗次先輩も好きで、
だから応援したいって、そう思うのは…ずるい、かな……」
そう言って俯いた伊助の口元は、きゅっと唇を噛んでいた。
きっととても悲しそうな顔をしている。
「…僕は、伊助がずるいとは思わないよ。
応援したいってそう思う伊助は、とても優しいと思う」
項垂れた頭を撫でられる。
優しく温かなてのひらが心地よかった。
伊助はようやく顔を上げ、庄左ヱ門を見つめた。
庄左ヱ門はにこりと笑う。
「でも僕は伊助みたいに優しくなくて、
あんまり他の男のことばかり考えられるのは好きじゃないんだ」
「わ、わ、わ、庄ちゃ、」
ぎゅっと抱きすくめられ、
夜着だから簡単に肌蹴た肩に顔をうずめられる。
「…庄ちゃん、冷静になろうよ」
「……伊助のことになるとどうも、ね」
伊助は庄左ヱ門の背中に腕をまわして夜着をぎゅっとつかんだ。
拗ねたような声が可愛くて、くすくすと笑っていると、
さらに抱きしめてくる庄左ヱ門の腕の力が強くなって、
伊助も笑って強く抱きしめ返した。
「…僕は幸せだなぁ」
僕の大好きな人たちもみんな幸せになって、
笑ってくれたらうれしいな。
伊助がそう呟いた声が聞こえたのか、
庄左ヱ門が僕も幸せだよと優しく言った。
・夏の馬鹿(くくタカ+鉢)
「あーつーいーのに、お盛んですこと!」
「うあ!!」
「痛っ!!」
後ろからの声とともに背中に飛び蹴りをくらわされた兵助は、
タカ丸と額を打ちつけあってしまった。
タカ丸は涙目で目を回し、兵助は慌てて振り返る。
いや、犯人などとうに分かっているのだが。
「さ、ぶろうお前っ…!」
「なに邪魔してんだみたいな顔してんじゃねーよ!
こっちだってなあ別に真昼間からお前等がイチャコライチャコラしてようが、
ぶっちゃけどうでもいいんだよ!」
けどなあ!と兵助の部屋の入り口を指差す。
「部屋全開でおっぱじめるってなんだお前馬鹿か!
なに、そういうプレイなわけ!?」
「ちがっ!忘れてたんだって!(本気で)」
「あー…(上に同じ)」
「てゆーかなんなのこの暑いのになんだよけしからんな!」
「雷蔵にべたつきすぎて接近禁止令出されてるお前にだけは言われたくねえ!」
「うるせー!こちとら欲求不満なんだよ馬鹿野郎!」
「んなこと言われた俺はなんて答えりゃいいんだよ!」
「ああもう!雷蔵超恋しいんだけど!!」
「心底俺に関係のない話だな!じゃあさっさと自分の部屋帰れよ!」
「今雷蔵にあったら絶対抱きしめたくなるから無理!
でも近づいたら本気で殺られる可能性あるから無理なんだよ畜生!」
「いっそ死ね!」
「もう兵助くん…俺の部屋いこ…」
・ピロートークはある意味2回戦
「…お前の、そういうのが、嫌いだ」
「えぇ?…なぁに」
「とことん底意地が悪い。ねちっこい」
「何をいいますか。兵助くんだって人を苛めて喜ぶくせに。
昨日はひどかった、あれは超ひどい、もーやだ」
「…うるさいな。善がってたくせに」
「ほらそういうとこ!兵助くんって意地悪だよねぇ」
「お前ほどじゃない」
「そんなことないよお。兵助くんさ、Sだもん」
「だからお前ほどじゃないっつーの!」
「いたあ!蹴らないでよ!狭いんだか、ら!」
「蹴り返すな!」
「生憎そんなにMじゃないんで!」
「多少はMなのかよ!てか押すな!落ちるだろ!」
「これ俺のベットだもん!兵助くん床で寝ればいいじゃん!」
「キレんなよ!」
「キレてないですよ!」
「なんだよ!自分だってさっき俺にあんなこと…!」
「兵助くんだって!俺、腰すっごい痛かったんだからね!?」
「にしては元気だったじゃねーか!」
「兵助くんがそそるんだもん!」
「そういうこと真顔で言うな!」
「本気だもん!兵助くん色っぽい顔してるから誘ってんのかと、」
「誰が!もう、黙らせるぞ!」
「なっ、あ!もう眠いって、ぁ、っ…!!」
~暗転~
そして3回戦へ
タイトル「ピロートークはある意味2回戦」(MEMOさま)