拍手7

 

1   炎天下×5年
 
 
じりじりじりと肌が焼け焦げるような日差しの下、
4人は浴衣を着てのそのそと歩いていた。
 
「あっちぃ…もう太陽死ねこのやろう…」
「三郎暑い暑い言うな、うっとうしい」
 
準備よく、ひとりだけ団扇をもってあおいでいるくせに。
兵助はじろりと三郎を横目で睨んで毒づいた。
三郎はその視線に同じく睨んで返す。
 
「うっせ…、こちとら皮一枚多いんだぞ…」
 
覇気の無い声で呟く三郎の睨む目は思った以上に弱弱しい。
それを見た兵助は少し目を見開く。
 
「らいぞー…ぱたぱたして…」
「はいはい。そんなので祭りの準備大丈夫なの?」
「仕方ないだろ、学級委員として町への奉仕活動…あちぃ…」
「ああもう、喋んなくていいから!もー、変装やめちゃえばいいのに」
「やだ」
 
頑固として拒む三郎に、ほんと馬鹿なんだからと苦笑しながら、雷蔵は団扇で風を送る。
三郎は少し弱弱しく、ありがとうと笑った。
 
 
 
「おもったより重症みたいだなー」
後ろから2人を見守っていた八左ヱ門が独り言のように言って笑うと、
隣で歩く兵助は八左ヱ門とも三郎と雷蔵からも顔を背けそっぽをむく。
 
「…今度うっとうしいと思ったら皮剥いでやる」
 
小さく呟かれたその声に、
お前も素直じゃないよなぁと八左ヱ門は笑った。
 
 
 
***
久々知は三郎に謝るのは苦手そう(ピンポイントで)
→4年
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2   スイカ×4年
 
 
天辺をくしゃりと口に含むと、甘い水分が喉を潤わす。
くしゃりくしゃりくしゃり、その赤い身を噛み砕いていくと、
口の中には堅い小さな種だけが残った。
 
綾部がそれをぺっと吐き出すと、隣で見ていた滝夜叉丸は顔をしかめる。
「行儀が悪いぞ、喜八郎」
たしなめながら白い手拭で、赤い水で汚れた口まわりを拭う。
慣れたような手つきに綾部の隣に座っていたタカ丸は笑みを浮かべた。
「滝くんお母さんみたい」
「ママー」
「何んだと喜八郎!タカ丸さんも何言ってるんですか!って、三木ヱ門!」
 
突然滝夜叉丸に名前を呼ばれ、三木ヱ門はお盆に並べられたスイカに伸ばしかけていた手を止める。
「っなんだ、急に!」
「それは私が食べようとしていたスイカだぞ!」
「はあ!?そんなもの勝手に決めるな馬鹿夜叉丸!」
「なにー!?この阿呆ヱ門め!」
「やるかー!?」
「やってやろうじゃないか!!」
 
 
「…まあ、ずいぶん子供な争いだこと」
「綾ちゃんちゃっかりしてるねぇ~」
 
いつのまにか2人の喧嘩の火種となったスイカを頬張る綾部に、タカ丸は呟いて苦笑する。
まあ当人たちがスイカのことなんて忘れて、各々の武器を手にしだしたからには、
今更どうだっていいことなのだろうけど。
とにかく、夏祭り行くからってせっかく着た浴衣が汚れてしまっては大変だ。
 
どうしたものかと思いながら「ほらほら、髪を結いなおすよー」と呼びかけると、
すぐさま1年生みたいな元気な3人の返事が返ってきて、タカ丸は笑みをこぼした。
 
 
 
***
タカ丸が髪結うよーとか洗うよーっていうと、
4年がすごくうれしそうにすればもだえるほど可愛いとおもいます
→タカくくタカ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
3   林檎飴×タカくくタカ
 
「あ、兵助くん!」
「お前…ひとりか?」
 
日も暮れたころ、タカ丸はぐったりと疲れた様子で木陰に座った兵助を発見した。
 
「んーん、さっきまで綾ちゃんたちと一緒だったんだけど飴買ってるうちにはぐれちゃって…」
「…子供か」
呆れたように呟く兵助に、タカ丸はぺろり、赤い林檎飴を舐めて、そんなことないよ!と返す。
そのふてくされたような顔が子供みたいだというのだ。
年上のくせに。
兵助は小さく笑みを浮かべた。
 
 
「…疲れてるみたいだね」
「まあな。三郎に無理やり手伝わされて夜店の準備とか…色々」
もう終わったけど、と続けようとすると、
中途半端に開かれた口を何かにふさがれた。
 
「むぐっ」
 
無理やりつっこまれたそれに舌があたると、
ざらざらとした触感と、同時に感じる甘味に眉をよせる。
 
「疲れたときは糖分だよ?
 間接ちゅーになるけどそこは我慢ね」
「…うっさい」
「あ、兵助くん、飴噛む人?
 どうせならもうちょっと間接ちゅー味わっ「うるさい黙れ」
がりっと林檎飴の端っこを噛むと、少しだけ現れた果実がやけに酸っぱかった。
子供じゃないなこいつは。
おもしろがるように笑う顔がどうも意地が悪い。
 
 
「ひど…、あぁ!!」
「なんだよ……あ」
 
 
 
***
…うちのタカ丸さんに迷子癖疑惑
迷子というよりは自由人すぎてふらーっと行方不明になる感じの人でしょうか
夫婦はなにかを発見したもようです
→鉢雷
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
4   面×鉢雷
 
 
「三郎ー?おーい、三郎?」
雷蔵は辺りを見渡しながら、呼ぶ名前の人物を探す。
八左ヱ門と夜店を見ている間にふらりとどこかへいってしまったのだ。
あいつはまったく…とため息をつく。
 
「おーい、さぶろ、」
「雷蔵」
 
ふと、後ろから声がした。
にぎわう祭りの雑踏からは少し離れた林の奥からだった。
「こっちだよ」
雷蔵は、静かに笑うその声に振り返る。
暗がりの奥に、薄黄色がぼんやり見えた。
 
「…どうしたの、その面」
「夜店で買った」
狐の面の奥から聞こえるくぐもった声は、三郎のものだ。
はあ、と雷蔵はため息をつく。
 
「急に消えたと思ったら…」
「悪い悪い」
 
反省の色など見えない声で謝りながら、
三郎はその狐の面を片手で外し、唇と片目だけを覗かせた。
 
 
「なあ雷蔵、なんで狐は人に化けるか知ってるかい?」
「え?…さあ、どうして?」
「狐はな、人が好きなんだよ」
 
 
化ける理由なんてそれだけさ。
 
 
やはり悪いなんて思っていない。
面の下の顔はいつものように笑っていた。
 
 
 
***
三郎と狐の面はとてもとても萌えます
にしてもタカ丸も三郎も自由人…
三郎は地味に人ごみとかに酔いそうだなあと思います
→綾善
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
5   金魚すくい×綾善
 
 
「あ、綾部!」
「先輩」
「なに…金魚すくい?」
 
夜店を覗くと、赤と黒の小さな魚たちが、狭い水桶の中を泳ぎまわっていた。
綾部がすくおうとポイを水につけてすばやく泳ぐ小さな赤の下へもぐらせるも、
すくって水からあげた瞬間に、魚はばたばたと水を恋しがって暴れる。
もろくなった薄い紙は、すぐにやぶれた。
 
「……」
「よし!じゃあ僕も一度やらせて」
「…先輩、できるんですか?」
「これでもわりとうまいんだよ?」
 
伊作は店主にもらった道具をもって、よぅしと意気込みしゃがみ込む。
同じく、小さな赤い魚のしたに、ポイを沈めた。
 
「小さくても生き物なんだから、優しくしてあげないと」
 
ゆっくりと金魚を救い上げる。
金魚はぴちぴちと跳ねていたけれど、
案外あっさり、伊作の手によってすくわれてしまった。
 
「ほら、ね?」
「…そうですね」
 
そうやって優しすぎるくらいな優しいあなたがとても好きですよ。
 
 
 
「先輩」
「ん?なに?」
「浴衣の裾、水につかってます」
「え、えぇ!?」
「そういうところも、あなたらしくて好きですよ」
 
 
 
***
伊作先輩の特技は地味そうだなぁという妄想。
綾部は基本不器用そうです。
→火薬
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
6   人ごみ×火薬
 
 
「まさか二人にあえるなんてねぇ」
「えぇ、さっきそこであったんですよ三郎次先輩とは」
「奇遇だなぁ」
「できれば会いたくなかったですよ…」
「「え…?」」
「(そんな目で見るな…!)いやうそですすいません」
 
 
捨てられた子犬のような年上2人の瞳など直視できるものか。
 
 
「あ、そうだ。伊助ちゃんも三郎次くんも何か食べたいものある?」
「「へ?」」
「なんでも奢るよー」
「好きなもん言えよ」
 
 
そう言って2人そろってにっと笑うものだから、おもわず、
 
 
((どうしよう、かっこいいとか、思ってしまった…!))
 
 
 
***
でも後々ふつうに間接ちゅーとかしてるの知って、
やっぱりうちの先輩たちただのバカップルだった…って思うのです
→4年5年
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
7   帰り道×鉢雷
 
雑踏の流れがそれをれを家路を向き始めた頃。
そろそろ学園に帰らなければという時間になったので、
三郎と雷蔵は八左ヱ門を探し始めた。
 
 
「どこいったんだよハチは」
「三郎をばらばらになって探してたんだけど…」
「もう放って先帰ろうぜ…」
「なに言ってるの!」
「あいつなら絶対、今頃委員会のチビどもに見つかってつかまってるって。
じゃないとあいつの勘の良さなら、もっと早く俺を見つけてるさ」
「う…そう、かなぁ」
「確実にそうだ。今頃虫とりでもして、挙句俺のことなんて忘れてやがるって」
「…うーん、なんかそんな気もしてきた……」
 
 
 
***
勘の鋭さなら竹谷>三郎って感じならいいです
動物的竹谷とても萌える
三郎は時と場合で竹谷をも上回りそうですが(おもしろ要素加わると)
→そのころ竹谷
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
8   帰り道×生物
 
 
「まったく…孫兵、人ごみにジュンコ連れて来て逃がすなよー」
「でも置いていくなんて可哀想でしょう」
「そりゃ気持ちはわかるが…まあいっか、ジュンコも無事見つかったしなぁ」
「ついでに虫もたくさん捕まえましたしね」
「また虫小屋が狭くなるぞ……改築しないとなぁ」
「…次の予算会議どうしましょうね」
「あの鬼委員長に正攻法はだめだろうしなー…あ、おーい!転ぶなよー!」
「「「「はーい!」」」」
「元気いいなー」
「…探してると全員集まりましたよね、生物委員」
「んーそうだな」
「……先輩、フェロモンでも出てるんでしょうかね」
「出てんのかもなー」
 
 
わしわしと頭を撫でられて、
にかっと夏の日差しみたいな明るい笑みを向けられたものだから。
 
 
(そういう人間、なんだ)
 
 
虫じゃあないよな。
笑うし話すしでっかいし。
 
 
「今度はカブトムシとりに行こーな!」
「…先輩っておもしろい生き物ですよね」
 
 
 
***
竹谷と孫兵が好きです
カップリングでもコンビでも
ちなみに竹谷は完全に三郎のことは忘れてます
→タカくくタカ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
9   帰り道×タカくくタカ
 
 
日がすっかり落ちたころ。
今日ばかりは学園にかえる道のりが少し寂しい。
お囃子の声と町の灯りが遠ざかるのを何度も振り返って名残惜しげに眺めながら、
楽しかったねぇと笑いかけながらタカ丸はゆっくり歩いた。
 
 
「夏だねぇ」
「そうだな」
「今日スイカ食べたんだ、実家から送られてきたやつ」
「へぇいいな」
「まだ一玉あるから、明日食べようね」
「うん」
「花火とかもしたいし、」
「うん」
「海もいきたいし、」
「うん」
「いろんなとこ遊びにいきたいね」
今年で全部できるかなあ、と呟く声に、兵助はタカ丸を見上げた。
 
「別に来年になったって、何年だって、かかってもいいだろ」
「…へ?」
 
見上げてきた視線がするりと逃げていく。
追いかけてみれば、暗がりで見ても頬が真っ赤だ。
 
 
「そっかぁ、」
 
君と一緒じゃ、したいことなんていつまでたっても尽きやしないもの。
急ぐことは、ないらしいし。
 
「長いつきあいになるねぇ」
「…どーも」
 
 
 
 
***
夫婦っぽいととてもニマニマするんだこの夫婦
夏プロジェクトの一環でした。