エンカウンター

 

※現パロ(高校生)です。
 
 
 
 
 
「およ?」
 
ドアノブを回した八左ヱ門が間抜けな声をもらした。
がちゃんがちゃんとちゃんとせわしなくノブを回し、あれー?と呟く。
「なにやってんだよハチ」
「鍵閉まってる…」
「じゃあ早く開けろよ」
こちとら腕いっぱいに荷物もってんだぞコラ、と両手の塞がった三郎は八左ヱ門を足蹴りする。
「痛ェ!いやだって俺鍵閉めてないし!」
「はあ!?ここお前の部屋だろうが!」
三郎の言葉どおりこの部屋の住人である八左ヱ門が焦りながらさらにノブを騒がしく回転させていると、
となりで雷蔵が苦笑いを浮べた。
 
 
「兵助が帰ってきてるんじゃない?ほら、兵助いつも鍵閉めてたし」
そういわれてみれば、あの生真面目は学生寮内でも鍵閉めなんかはしっかりしていた。
兵助曰く、三郎の悪戯対策らしいが。
 
 
「おっ、なんだ斉藤のところを追い出されたか」
「えーそれはないでしょ」
八左ヱ門と同室でありながらいまやほとんどこの部屋に帰ってきていない友人を思い浮かべて、
にまにまと悪い笑みを浮かべる三郎に、雷蔵はきっぱり否定する。
それだけの根拠があるくらい、あの2人の仲は良好なはずだ。
もちろんそのことは三郎だって知っているけれど、
そうだったらおもしろいという彼の希望も込められての性質の悪い発言だろう。
「まあそれはないよな。
 おーい!兵助ー!鍵あけろー!」
八左ヱ門も笑って否定して、今度はドアを叩いて叫んでみる。
チャイムあるだろーがと三郎が呟いていたが、こっちのほうが手っ取り早い。
 
 
ドアの向こうからばたばたと騒がしい足音が鳴り出した。
やはり兵助がいるのだ。
「ちょっ…ちょっと待って!」
焦ったような声。
なにやらどたばたと駆けずり回っているようで、部屋の中が騒がしい。
「おい兵助さっさと開けろ!荷物重いんだよ!」
「げっ三郎いんの!?」
「げってなんだ!」
三郎が不機嫌そうに顔をしかめていると、
壁1枚向こうから鍵の外れる音がしてドアが開かれた。
 
「あー…っと、悪い」
 
顔を出した兵助のばつの悪そうな様子で、よほど焦っていたのか冷や汗までかいている。
不思議そうに3人は顔を見合わせた。
「何してたんだ?」
「えっ、いや別になにも!
 それよりどうしたんだ3人揃って」
ここは一応八左ヱ門と兵助の部屋である。
雷蔵と三郎の2人の部屋はもう少し奥のはずだけど。
 
「あぁ、皆でこの冬最後の鍋でもしようと思って。
 あとから兵助とタカ丸さんも誘おうと思ってたんだけど丁度よかったな。
 タカ丸さんは?」
「え」
人のいい笑顔で言った八左ヱ門の言葉に、兵助は思わず声を上ずらせる。
視線を彷徨わせて口をもごもごと動かし、明らかに不審。
「どうかしたのか?」
「タカ丸くんと喧嘩?」
八左ヱ門と雷蔵が心配そうに兵助に問いかける。
 
 
そういう時に一言二言冗談交じりになにかを言うのが鉢屋三郎という男であったが、
今日の今の状況にそれだけの余裕はなかった。
なんせ両手に2つずつスーパーの袋を抱えているのだから、いい加減指がじんじんと痺れて麻痺している。
荷物持ちのじゃんけんで負けてしまったのだから仕方ないのだけど(あのときチョキだしてればよかったと後悔はしている)
正直、ここで立ち話している場合ではない。
そんな三郎が、未だになにやらはっきりしない様子の兵助に痺れを切らすのには時間はかからなかった。
 
 
「ああもうどうでもいいからとりあえず入れろ!
 荷物重いんだよ!!」
「はっ!?ちょっ三郎!!」
3人の間をすりぬけて三郎が勝手に部屋に入っていく。
慌てたのは兵助だ。
「じゃあ僕もおじゃましよっと」
「俺は自分ちだし、ただいまーっと」
「あっ!ちょっ…!」
三郎に続いて雷蔵と八左ヱ門も部屋の中へ入っていく。
八左ヱ門に関しては文句も言えないけれど、
なんだって今日に限ってこの似非双子がここに来るんだろうか。
兵助は息をついた。
…この先の展開なんて容易に想像できてしまう。
 
 
 
 
 
 
「えーっと…こんばんは」
 
 
 
金色の髪をゆらして、へらりと照れたように笑っているその人は、
本来ならばもうひとつ上の階にいるはずの男で。
 
 
「タカ丸くん?」
 
部屋の奥にいたその男を見つけて荷物を持ったままぼけっと突っ立っている三郎の後から顔を出した雷蔵が
首を傾げて先ほども話題になっていたその名前を呼ぶと、タカ丸は苦笑いに近いものをうかべた。
3人の後で頭を抱えている兵助に向かって。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「人の部屋で盛んないでくださいよタカ丸さん」
 
 
ドアが開かれるまでの時間と先ほどの兵助の様子から、
タカ丸がここにいる理由についてお茶を淹れながら八左ヱ門が苦笑してクレームをつける。
せっかく1人部屋を使っているのだから、是非ともそちらで勝手にして頂きたいというのはもっともらしい要望だ。
 
 
その言葉にタカ丸は苦笑する。
「あはは、ごめんねぇ。
 でもさっき盛ってたのは俺じゃなくて兵助く…痛っ!痛い痛い!!」
タカ丸は抓られたわき腹を押さえて情けない声を張り上げる。
それから唸りながら潤んだ目で加害者である隣に座る兵助を軽く睨んでほんとだもんと口を尖らせた。
「黙れ馬鹿丸」
「わぁ、兵助くぅんわっかりやすーい」
「死ね三郎」
タカ丸の声真似をして(しかも似てる。腹がたつけど)三郎が馬鹿にしてきたので、
悪態をついて殴ってやろうかとすると、代わりに雷蔵が「からかわないの!」と頭を叩いてくれた。容赦なく。
兵助はざまぁみろと思いながら雷蔵に感謝した。
 
 
「でも兵助がタカ丸さんを部屋に連れ込んで襲うなんて意外だよなあー」
「…その話題続けないでくれ、はっちゃん」
台所でその会話を聞いていた竹谷からのからかうような声に、兵助は顔をしかめる。
ああほんとに運が悪い。
兵助は、実は俺って保健委員の要素あるんじゃないかと内心自嘲する。
 
 
「意外なんてことないよ、ねぇ兵助くん」
(また余計なことを…!)
とどめをさすようなタカ丸のその言葉。
ほんとこいつ殴ってやろうか。
兵助はコタツの向かいに座る三郎からの視線を感じながらタカ丸を睨んだ。
タカ丸はその視線に(おそらく)気付かぬふりをして、にこやかに笑っていた。
「へぇー兵助も積極的なんだぁー」
頬杖をついて口の端をにぃっと三日月のように吊り上げて三郎が悪い顔で笑う。
あきらかにこの話を面白がって、根掘り葉掘り聞く気だ。
「うん、ていうか俺たち盛り上がる割合的には4;ろっ…ちょっ痛!マジでそれ痛いから!!」     
「うるさい!!
 お前、はっちゃんの手伝いしろよ!!」
兵助の怒鳴り声に、抓られて真っ赤になった二の腕をさすりながらタカ丸がしぶしぶ立ち上がりって大人しく八左ヱ門と一緒に鍋の用意を始める。
せっかく面白い話ができそうだったのにという表情に、
困った話だが、あいつにも三郎と似通った性質の悪さがあるのだと金髪の後姿を見てため息をついた。
 
 
 
 
 
 
 
「んで?
なに、お前が抱く割合は4なわけ」
 
 
 
(ああ一番面倒なのがまだここにいるんだった…っ)
 
おもしろいこと・興味をひかれたものに対する三郎の執着心ときたら半端じゃない。
粘り強さや妙な天才っぷりを無駄なところで発揮する、それが鉢屋三郎なのだ。
困ったことにこの話には雷蔵も興味を持ってしまったらしく、
兵助が目線で助けを請うても、さきほどのように頭を叩いて話の進行を阻止してくれる様子は無く、視線を逸らされた。
(雷蔵の馬鹿!)
勝手だと分かっていても心の中で文句を言わずにはいられなかった。
こうなったらもう諦めることしかないということは長い付き合い、百も承知だ。
 
 
「……ちがう」
「は?じゃあまさか6?」
「…じゃなくて、3:7」
もともとのタカ丸の言い分が間違ってるんだと兵助は言った。
ぱちっと目の前のほとんど同じ顔が、同じタイミングで4つの大きな目を瞬きさせる。
似非双子のくせにほんとうに血のつながり以上のものがこの2人にはあるような気がする、と頭の隅で兵助は考えた。
「3?」
「うん」
三郎の短い問いかけに兵助は素直に頷く。
八左ヱ門が出してくれたお茶をのんで息をついた。
「なんだ、じゃあやっぱり斉藤のが盛ってるのか」
「っていうよりも、」
かん、という音をたててマグカップを置いて、うーんと唸りながら兵助が腕を組む。
もともとそんなに口が上手い男ではないので、なにか言葉を探している様子だった。
しかしすぐに、大きな目を少し伏せて口を閉じて考えていた兵助が、うん、とひとつ呟いて、
 
 
「なんかあいつがやりたいようにさせてあげたいっていうか」
 
 
そう言ってああそう、そうだわと自身に納得したように頷いていた。
三郎と雷蔵はつい呆けてしまった。
惚気話というか兵助の愛の深さというか、そんなものを目の当たりにしてしまったような気がして。
雷蔵は妙に照れてしまい、言葉をなくして俯いた。
その頬の赤いのを見て三郎は少し口元をニヤケさていたのだけれど。(兵助が白い目でみていた)
 
 
「……でも、今日は襲う気分だったわけ?」
「うん、そう」
「なんで」
「だって、可愛かったから」
「……」
あまりに淡白でストレートな言葉に、三郎も雷蔵と同じように口をつぐんだ。
可愛いから襲いたくなったなんて、なんともまぁ男気あふれた理由である。
これだけ聞き出しておいてなんだが、もう勝手にしろと言いたい。
 
 
 
「ほら、三郎なら分かるだろ?」
 
 
ちらりと横目で雷蔵を見て今度は兵助がおもしろがるような笑みを浮かべる。
一瞬なにを言われているのか理解できなかったけれど、
「…分からないでもないな」
三郎はにっと笑い返した。
 
 
 
(だって、可愛いんだもの。
 今だって抱きしめてキスしたいし、  )
 
 
そう思っていることは長い付き合いの友人には筒抜けだったらしい。
 
 
三郎の隣でこの会話にちょっとでも興味を持った自分が馬鹿だったと顔を赤くして雷蔵は、
(兵助の馬鹿!)
と後悔しながら内心毒づくのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…だってさ、タカ丸さん」
「俺は4:6だと思うんだけどねぇ…」
「それでもやっぱりタカ丸さんの方が多いのか」
「だって兵助くんが俺を欲情させるんだもん」
台所で買ってきた豆腐を手のひらの上で6等分しながらタカ丸は笑った。
当然向こうの会話を聞きながらもこちらの声は聞こえないようにひっそりとだ。
八左ヱ門は肩をすくめて苦笑した。
 
 
 
 
「なんでもいいけど、この部屋で盛るのはだめですからね?」
「はぁい、兵助くんにはよーく言っておきます」
そういってけらけら笑うタカ丸は、なるほど、可愛らしいけれど性質が悪い。
八左ヱ門はあと喧嘩もやめてくださいよ、と1つ付け加えて注意した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
***
リクエストいただいた「5年+タカで下ネタ」です。
お言葉に甘えて現パロの高校生設定です!
MeGuさんありがとうございました!
 
5年+タカ丸というよりもタカくくタカ+鉢雷+竹谷な感じですね;;
しかも季節はもう春です…!!でもどうしてか鍋をやってほしかったのです。
どこまでが下ネタ許されるのかと考えたのですが、間違った方向へ爆走しているような(土下座)
内容はタカ丸と久々知の受け攻め事情ということで…うわぁ趣味に走ってすみません…
希望(?)としては4;6くらいで!←
あと部屋が開けられるまでの空白の時間とそれ以前のことはご想像にお任せしたいです(笑)
でも一応私が妄想してみた結果はこちら(くくタカでも大丈夫なお方はどうぞ)
兵助はタカ丸を甘やかしてればいいと思います。
でもわりとやるときはやる人だと思いまs(自重)
お気に召さなければほんと申し訳ないです!
こういうのったりヤマとかもなくまったり続いている話はとても書いていて楽しいのですが、
需要にこたえられている気がしません…
 
壱万打リクエストありがとうございました!